特集 ―学校教育法改正を入り口に―教員組織をどう活性化するか

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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本質は「硬直的な制度」

 テニュア制度の導入で単にアメリカの真似をしても、若手研究者の養成やそれを通じた科学技術活動の活性化という目的を達成できない恐れがある。
 アメリカのテニュア制度は元来、教育における自由の観点から導入されたもので、終身雇用の保障という本質的に硬直的な制度である。アメリカの大学では、この制度を含む人事制度はデパートメント制度と密接に関連している。デパートメントは学問分野に沿って設置され、比較的安定的な組織、換言すれば硬直的な組織で、テニュアトラックの教員はそこに所属する。
 一方で、研究のように変化の激しい活動はバーチャルな組織によって担われ、デパートメントに所属する教員がセンターやインスティテュートに参集して進める。研究活動のみを担うリサーチプロフェッサー等の流動的なスタッフはもっぱらこれらの研究組織で活動し、多くはテニュアを持たない。
 組織編成上は比較的安定的な組織にスタッフを配置し、変化が早い活動をバーチャルな組織で柔軟に実施するというのは、極めて合理的だ。しかし、わが国では、研究の盛んな大学ほど、大学院重点化などを通じて研究重視の基本組織に再編してきた。このような組織を前提としてテニュア制度を導入すれば、研究が硬直化する可能性がある。テニュア制度を導入するなら、組織設計も見直す必要があるだろう。


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