特集 ―学校教育法改正を入り口に―教員組織をどう活性化するか

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
  PAGE 24/32 前ページ  次ページ

任期制とテニュア制の連動など、人事の工夫を

 大学設置審査が簡素化され、それに替わるものとして認証評価が制度化されたが、わが国で同僚評価がうまく機能するかは、疑問である。一歩間違えば形式的な評価ごっこに堕落し、膨大なエネルギーを注ぎ込むだけで、悪貨が良貨を駆逐する恐れもある。
 すでに述べたように、流動化の前提は厳正な評価であるべきなので、厳しい人事評価を機関に内在化、制度化すべきである。日本では、任期制とテニュアトラックとの連動システムはまだ導入されていない。アメリカのように、任期制とテニュア制、トラック制を関連させるなど、組織・職階・人事の在り方を工夫する必要がある。アメリカの大学教授審議会のような専門家集団はないが、何らかの形で同様の議論ができる体制を確立すべきだろう。
 アメリカの教員は、平均40歳代でテニュアを獲得するまでは任期制などによる流動性が高いが、中年以降は身分の安定性が確保され、教育研究の活性化に寄与するシステムになっている。
 功成り名を遂げた教授が定年でお払い箱になる日本とは異なり、アメリカでは94年に定年制が憲法違反と判断された。優秀な教員は、テニュア取得後、名誉教授の地位を確保するなどして、30年以上一つの大学にとどまることもある。わが国では平均42歳で出身の研究大学にUターンし、60歳代で定年退職するので、研究重視型大学での在職はアメリカより10年短いことになる。
 優秀な人材確保のための個別機関内での厳しい選抜によって、初めて市場競争が成立し、その中で個別機関の威信が上下する。大型競争資金を導入しても、全分野で東大がトップであるような高等教育システムでは、到底、世界の最先端に伍してはいけない。
 教員職階と人事は一貫してタブー視されてきたが、将来的な知的営為を保証するため、安定的な人事制度を構築すべき時期に来ている。国立大学予算のマイナス1%シーリングや大学改革のボディーブローで疲れきった大学、教員に余力があるかは疑問だが、任期制を含む人事制度のあり方は、大学構造改革の第2ラウンドともいえる。


  PAGE 24/32 前ページ 次ページ
目次へもどる
大学・短大向けトップへ