特集 ―学校教育法改正を入り口に―教員組織をどう活性化するか

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【現場レポート】豊田工業大学

独自の予算と称号を与えて若手教員の研究を活性化

教授主導の組織に縛られず、独自の研究活動が可能に

 豊田工業大学は2005年度から、優れた研究プロジェクトを提案した助教授以下の若手教員に、特別な称号と研究費、PD(ポストドクトラル)採用枠を与える「リサーチ・ファカルティー制度」を導入した。研究を活性化させることが主な狙いで、学内コンペで対象者を選ぶ。
 豊田工業大学の教員組織は、教授、助教授、専任講師、助手などで構成される研究ユニットが基本単位だ。研究活動にはユニットの責任者である教授の意向が反映されやすい。生嶋明学長は「本学がそうだということではないが、こうした従来型のシステムで若手研究者の意欲をそぐことがないよう、自由に研究できる環境を整備したかった」と語る。
 リサーチ・ファカルティーに採用された若手教員は、研究ユニットに縛られず、独自の研究活動ができる。従来の職位とは別に、助教授なら「研究教授」などワンランク上の称号が付与され、独自の研究予算も与えられる。これとは別の予算で、独自の判断でPDを1人採用できる(図表)。

図表

 通常は、教授、助教授などの職位別に経常研究費が決まっていて、その積算額が各研究ユニットに配分される。リサーチ・ファカルティーになると、経常研究費はゼロとして算定。研究ユニットから研究費が出ない代わりに、個人に対してプロジェクト研究費が支給される。つまり、研究ユニットから離れて自由に研究予算を執行でき、その額は、講師クラスでも教授の経常研究費をはるかに上回る。
 研究に伴う出張の旅費もワンランク上の基準が適用される。制度導入に伴う研究費の増額分は、法人の承認を得て、他の研究費を削らず、ほぼ純増の形で確保される。
 リサーチ・ファカルティーに選ばれても、教育や学内運営の業務は免除されない。一定の担当科目を持ち、学内の委員会にも出席する。生嶋学長は、「教育は一つの組織体として進めなくてはいけないが、研究は個人の能力に負うところが大きい。そこで従来の職位のまま研究ユニットに所属して教育を担当し、研究活動に限って、特別の称号を持って自由に研究してもらうことにした」と説明する。


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