入学前の「学生予備軍」に対する支援の基本は、情報提供です。これには、学生生活への円滑な移行の支援、受験勉強のサポート、学生募集を通じた将来の大学経営資源への投資、という三つの目的があります。
大学進学を希望している受験生は、学校の進路指導部、予備校、受験雑誌などから志望校の情報を得ることができます。志望校が直接大学や学部の情報を提供することは、進学に関する意思決定に大きな影響を与えることになります。オープンキャンパスやWebによって個別に対応すれば、より効果的でしょう。
受験生には、学部学科構成と教育内容、就職、資格取得、学風、キャンパスライフ、住まい、サークル活動、アルバイトなど、できるだけ具体的な情報を提供することが大切です。それによって、学生生活のイメージが描きやすくなるからです。これらは、進学することはほぼ決めているが、どこの大学、学部にするか決めかねているという受験生にとって、特にニーズの高い情報です。
中には、経済的な理由から進学をちゅうちょしている高校生もいます。そんな生徒には、大学入学前と入学後にかかる費用の詳しい情報を提供することによって、意思決定を助けてあげられます。保護者に学費の負担を期待できないからと進学をあきらめかけている生徒、一人暮らしでの学生生活にいくらかかるのかと悩んでいる生徒などもいるでしょう。進学費用に関する情報提供は非常に有用で、潜在的な進学需要の掘り起こしにつながります。
授業料などの納付金、教材費などの学費、生活費だけではなく、日本学生支援機構や学内の奨学金、学費ローン、アルバイトなど、学費を賄うための情報の提供も、学生募集に効果があると考えられます。最近は、民間の銀行との提携による授業料ローンなどのサービスを提供する大学が増えています。中には、卒業してから返済が始まり、在学中は負担がないというローンもあります。このような情報は、入学後ではなく入学前にこそ積極的に提供すべきです。
大学の費用情報は、志願者の数だけでなく、入学者の質にも影響を及ぼします。例えば、入試や入学後の成績優秀者に対する学費支援の情報を発信することによって、優秀な学生を獲得できます。
このような情報を提供するためには、大学が費用に関する十分なデータを集める必要があります。在学生を対象に学生生活調査を行い、データを整備しておくといいでしょう。この種の調査は文部科学省が実施していますが、各大学でも独自に行うべきです。
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