―このアンケートでは、どの段階の教育に不満かという質問もあり、「大学」という答えが36.4％で最も多かったようです。原因をどのように分析されますか。

浦野　企業は、採用活動を通じて最も接点が多い大学を、どうしてもシビアに評価する傾向が強いのでしょう。
　不満につながる最大の問題は、大学に入ること自体が目標になっていて、そこで何をやるのかということが学生自身に欠落していることだと思います。目標がないから熱心に勉強する気になれないし、大学もうまく動機付けができていないのかもしれません。そんな学生生活では、職業観も育たないし、自分が社会的存在であるという自覚すら持てないまま、社会に出ることになってしまいます。
　大学は、４年間の教育成果を保証できる人材を送り出すという姿勢を徹底し、卒業認定を厳しくしてほしい。その意味で、近年、キャップ制やGPA制度の導入が増えていることは評価しています。
　産業界が大学教育に期待するものを挙げると、いずれも、先ほど述べた「答えのない問題を考える教養教育」につながります。例えば、社会人として求められる倫理感、すべての活動の出発点となる好奇心など。
　それから、世の中の課題、人間の課題に関する洞察力です。食品会社であれば、食という事業を考える上で、人間の楽しみの源泉という最大のテーマがあり、さらに、健康、安心・安全、利便性といった視点から課題を見つけ、商品の開発や改良につなげます。そんな作業を、事実に基づいてロジカルに進める、そんな力を大学で身に付けてほしいと思います。