リベラルアーツは、伝統的に大学教育の核心であり、その充実のための取り組みが必要だ。本学では、基盤教育でリベラルアーツの理念を実現しようとしている。 基盤教育は、「コミュニケーション科目群」と「グローバル科目群」から構成される（図表２）。

　コミュニケーション科目群には、コンピュータリテラシーのほか、英作文やスピーチなど実践的な英語能力を高める科目がある。
　グローバル科目群は、「ベーシック・スタディズ科目」「グローバル・スタディズ科目」「日本人としてのアイデンティティに関する科目」に区分される。ベーシック・スタディズ科目では、社会学、経済学、心理学、文化人類学、世界史などの人文社会科学系から、代数学、統計学、さらに実験を含む物理学、化学までをカバーしている。芸術に触れることも重視し、生演奏を聴き芸術論を学ぶ、あるいは国際的に知られる美術史の専門家が西洋美術や日本美術について語る、といった授業もある。
　グローバル・スタディズ科目は、社会のグローバル化に対応する科目だ。グローバル化は、国境という概念を超えた「ボーダーレス」、インターネットの普及で実現した「同時進行型世界」、「地域的アイデンティティの確立」の三つの座標軸で捉えなくてはいけない。三つの軸に沿って「異文化間コミュニケーション」「環境科学」「東北文化入門」などの科目を設けた。
　日本に関する科目は、主に留学生を対象としたものだが、日本人学生も履修する。日本の文化や社会について英語で学ぶことで、日本という国を相対的に理解できるようになる。新渡戸稲造の英語による著作「Bushido:The Soul of Japan 」（『武士道』）を全学必読文献にし、日本や日本人についての名著５冊を学長推薦の必読書とするなど、日本人としてのアイデンティティを探求するための教材も工夫する。
　基盤教育のカリキュラムには、リベラルアーツを推進するための一種の方法論を持ち込んだ。一般に、各科目はそのレベルに応じて縦方向に構成されていて、科目同士の横の連携は希薄だ。本学では、リベラルアーツの要素である「経験的方法」「量的論証」「批評的思考方法」などの手法・視点を各科目に取り込むことによって、科目間の横断的連携を図っている。
　このうち、経験的方法はフィールドワークなどを意味する。量的論証は、統計学的に世界を捉える方法で、人口問題などでは特に重要となる。批評的思考方法は、正確な知識に基づいて物事を批判的に見る目を養うことが目的で、ディベートやプレゼンテーションの力につながる。
　各科目の担当教員は、これらの視点や手法を共有し、それに沿って授業を進めることで、一貫性のあるリベラルアーツ教育を展開している。