工学院大学が2006年度に設置するグローバルエンジニアリング学部の出発点は、97年度に機械工学科に設置した国際工学コースだ。01年度に国際基礎工学科に改組し、さらに今回、学部に昇格させる。9年間の実績を基に、新しい工学教育のモデルを構築し、世界で活躍できるグローバルエンジニアの育成を図る。
ビジネスのグローバル化が加速し、それに対応できる技術者の育成が急務とされる。他国の技術者と共同でものづくりを進めるためには、技術開発力や語学力はもちろん、異文化に対する深い理解が求められる。
古屋興二学部長は、グローバルエンジニアについて「環境問題など科学技術の発展に伴う様々な側面について、地球的規模で総合的に考察できるエンジニアで、技術者の枠にとどまらず、社会のリーダーにもなり得る人材」と説明する。
従来、こうした人材の育成は、企業がOJTを通じて行ってきたが、社会の急速なグローバリゼーションに対処するため、大学教育への期待が高まっている。しかし、従来の工学教育は、機械工学や電気工学といった専門分野ごとの知識修得が中心であった。
ヨーロッパやアメリカの大学では、グローバルエンジニア育成のための教育がすでに始まっているが、日本では同大学が初めて本格的なプログラムとして打ち出したという。
ただし、グローバルエンジニアの育成は、従来の工学教育にとって代わるものではないという。古屋学部長は「エンジニアの世界では、従来通りの特定分野の深い知識や技術を持つ専門技術者も不可欠」と語り、従来の工学教育と共存する新タイプの工学教育であることを強調する。
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