特集 「学士課程教育」の構築

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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【「教養」対「専門」を問い直す】

学部教育から学士課程教育へ
自立した創造的学習者の育成を目指す総合大学の挑戦

新潟大学副学長(学務担当) 濱口哲

大綱化がもたらしたもの

 新潟大学は「自立と創生」を教育研究の理念として掲げている。敷衍(ふえん)すると、本学の教育目的は「学生を自立した創造的学習者として育成する」ことになる。自立した学習者とは、(1)学習の目的・目標・プロセスを自ら計画し(2)これを実行し(3)成果についての客観的な省察をもって学習目標の達成を実現する者、のことである。
 「学習」の場は学校だけにとどまらない。21世紀の日本が知識基盤社会であるとすれば、どのような場所で生きていく人であれ、生涯“学び”続けることとなる。従って、「自立した創造的学習者を育成する」という教育目標は、「知識基盤社会で真に創造的に活躍できる人材を送り出す」と宣言することを意味する。新潟大学は、現在、そのための教育改革に取り組んでいる。
 大学教育の改善はこれまでも不断に行われてきた。その中で、1991年の設置基準大綱化はやはり期を画するものであったといえる。大綱化以前、学部教育は「専門課程」と「教養課程」の二つの課程から構成されていた。大綱化により課程制が廃止され、多くの大学では教養部を廃止し、全学出動で教養教育を実施する体制に移行した。
 しかし、専門課程について抜本的改革は行われていない。「専門課程」という概念を脱して、新たな教育目標を定め、専門教育を基礎から組み換えることは行われなかった。その結果、大綱化後の学部教育は、脆弱化した体制による縮小された「教養課程」に、ほぼ従来イメージの「専門課程」を接続した教育の枠を出なかったといえる。
 大綱化以降、各大学は教養教育の改善に真摯に取り組んだが、残念ながら十分な効果を挙げなかったといわざるをえない。その結果、社会から大学卒業生の資質が批判され、知的関心の狭隘化や専門分野の理解の浅薄化が指摘されることとなった。教養教育重視の声が高まり、いくつかの大学は実施体制を強化している。しかしそうした対応が、大綱化前の学部教育イメージへの回帰だとしたら、その方向への改革に大きな期待はできないだろう。


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