特集 全入時代シフトで成功させる大学ブランディング

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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今や、受験生というステークホルダーも1つの固まりではない

 1つのステークホルダーの中でも、優先的なターゲットを誰に設定するかは、戦略上重要なポイントである。それによって、物語づくりが大きく変わってしまうからだ。
 企業の商品開発では、その商品をターゲットとなる人の生活の中にどう位置付けるかというポジショニングを十二分に検討する。例えばサプリメント系の飲料の場合、自宅で風呂上りに飲むものとフィットネス施設で飲むものとでは、コミュニケーション戦略はまったく異なる。
 高等教育のポジショニングを考えるとき、飲料との大きな違いは、ニーズが社会的に定義されてきたということである。社会では、高校を卒業すると一定のボリュームは大学に進学することが定着している。しかも、これまで「大学を出ること」イコール「大学に入ること」が大切で、その中のプロセスには関心が払われなかった。だから、大学が消費者のニーズを子細に検討するなどということは必要なかったのである。飲料でいえば、「日本人は風呂上がりには必ずこういう機能のサプリメントを飲む」という大前提がある、ということになる。
 しかし、飲料を求める消費者も、高校を卒業する若者も、もはや大きな1つの固まりではなくなっている。各大学は、ターゲットに対して4年間をどういう時間として提供するのか、検討する必要に迫られている。それは、同じ大学の中でも学部・学科、学年などでそれぞれ異なるだろう。いわんやほかのステークホルダーであれば、大学に求めるものはさらに大きく違ってくる。
 ミッション、ビジョン、バリューというブランドの核と、教育や研究の現場でのそれぞれの顧客とのやり取りとを、どのように構造化して大きな物語に統合し、大学のブランドにつなげるか。その戦略こそが、今、求められている。


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