特集 全入時代シフトで成功させる大学ブランディング

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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学生や取引業者との様々な場面を想定した事例集も作成

 倫理綱領策定までの流れは、次の通りだ。
 2000年10月、国際経済学部と外国語学部各2、3人の教授による倫理綱領検討委員会を設置し、約1年かけて素案を作成。これを基に、2001年11月から副学長、各学部長、教務主任など、執行部を中心とする企画委員会によって、綱領の策定作業が進められた。実際の運用に適するよう修正を加え、従来の勤務規則との関係を整理して、2002年4月に施行した。
 学内での位置付けは、図1の通りである。倫理綱領は、大学の理念と目指す教育像・キャンパス像、それを実現するための行動規範、具体的な場面を想定した事例集から構成される。教員同士、また学生、父母、職員、取引業者や公務員など、ステークホルダーごとに接し方の行動規範を明確化。事例集には、大学で起こり得る様々なリスクを具体的に示している。教員倫理綱領の策定を主導した企業倫理研究センター長の高(たか)巌教授は、次のように述べる。
 「企業の場合、起こりやすい事、実際に起こった事をルールとして綱領に入れることで、社内モラルの引き締めを図る。大学は、営利企業ではないから、問題の起こらない清廉潔白な所だという思い込みでルールを作ると、単なる理念に終わってしまう。企業倫理に関する研究がベースにあったからこそ、ここまで踏み込んで実践的な綱領を作れたと思う」

図表

 例えば、事例集の「教員と学生との関係」では、「学生の成績評価に関しては公正・公平を旨とし」、さらに、「学生から求められた場合には、その学生の成績評価の正統性について論拠を示して説明を行う」というように、具体的な対処方法を示した。学生と良好な関係を築くことで、教員・大学への信頼感を醸成しようという姿勢が表れている。「普段何気なくしていることについても、許される範囲なのか、ほかに方法はないのか、一度立ち止まって考えてみる、そうした指針として使っていきたい」と小野副学長は言う。
 ただし、高教授によると「学生との関係では悩ましいところもある」という。「ゼミの学生が旅行のお土産を持ってきてくれた時に『綱領があるから受け取れない』とは言いづらい。もちろん、それによって成績や評価にゆがみが出ることは許されない。私の場合は自分の著書をあげることにしている。要は、公正に行動していることを外部の人に対してきちんと説明できるかということが大切だ」。


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