特集 全入時代シフトで成功させる大学ブランディング

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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【大学事例 5】

学生、社会との信頼の絆として教員倫理綱領を制定

麗澤大学

麗澤大学は、建学以来、知識と道徳の一体化を掲げてきた。全国の大学に先駆けて策定した「教員倫理綱領」は、ブランディングにつながる価値創造という点において、どのような可能性を秘めているのだろうか。

道徳教育の伝統とCSR研究の実績が生んだ必然性

 研究費の不正流用、論文のねつ造、学生へのセクハラ――。大学教員の不祥事が相次ぐ中、近年、大学の社会的責任を重視し、教職員の倫理規定を明確にしようという動きが起きている。
 その先駆けとなったのが、麗澤大学の「教員倫理綱領」である。麗澤大学の理念を実現するために、教員が日常の教育・研究活動の中で守るべき行動規範を示したものだ。教員が、ほかの教員、職員、学生、父母、官公庁など多様なステークホルダーと接する過程には、様々なリスクが想定される。普段何気なくしている行為も、厳密に見れば、贈答や接待に当たることがあり得る。教材作成や論文執筆において、他者の知的財産権を侵害してしまう場合もある。
 小野宏哉副学長は「大学内外の諸活動に潜む様々なリスクを明確にして不祥事の発生を未然に防ぐとともに、理想とする教育像・キャンパス像についての認識を共有することが、倫理綱領の狙い」と指摘する。
 麗澤大学では他大学の不祥事を他山の石として、倫理綱領の策定に踏み切ったわけではない。建学以来の教育の独自性と近年の研究成果という、同大学ならではの蓄積が必然性を生んだという。
 創立者の廣池千九郎が「道徳科学」(モラロジー)という学問分野の創始者で、麗澤大学では道徳教育による「知徳一体」を教育の基本理念としてきた。1年次での「道徳科学」の必修化をはじめ、道徳教育・倫理教育を重視。生命倫理・企業倫理・情報倫理・環境倫理など、現代的なテーマに関する研究も行っている。
 企業倫理研究センターの、企業の内部統制に関する研究もその一つだ。CSR(企業の社会的責任)やSRI(社会的責任投資)の概念がまだ一般的ではなかった2000年、いち早く企業倫理に基づくマネジメントシステムを提唱し、企業の意識向上に影響を与えた。
 この成果を受け、「大学も組織である以上、同様の視点が必要ではないか」という意見が提起されたのも、当然の成り行きだったといえよう。当時の副学長(現・梅田博之学長)の号令の下、その年のうちに検討委員会が組織され、教員倫理綱領の策定に着手した。現代社会の要請から生まれた最新の研究成果と、建学以来、培ってきた「道徳教育」という独自の価値が、倫理綱領策定の土台となったのである。


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