特集 志望校はこう選ばれている

埼玉県川口市立
県陽高校


地域社会で活躍するリーダーの育成を目指し、計画的な進路指導で生徒全員の希望進路の実現を図っている。多様なプログラムで大学進学に必要な学力を養う。各学年4クラスという小規模校ならではの個別指導で進学実績を伸ばしている。部活動も盛ん。学力向上への取り組みに、今後は本格的に着手する考え。


所在地●埼玉県川口市
創立●1973年
学科・課程等●全日制/普通科/共学
2006年度入試合格者数= 聖学院大10人をはじめ私立大延べ57人


大学に望むこと

就職に関する質問にはっきりと答えてほしい。その学科の卒業生はどこに就職して、どんな仕事に就いているのか。出口が見えないと、生徒に勧められない。大学が全学生を就職させ、社会人として送り出す責任をきちんと果たしているのであれば、これほど多くのフリーターがいることなど、ありえないはずだ。


嶋津昌吾進路指導主事

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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進路カルテで自分を振り返りながら、志望校を確定

■ 進路指導の内容・スケジュール
 全員の希望進路の実現を目標とし、2005年度は144人中143人の進路が決定した。
 本校では、独自の「進路カルテ」を柱にした進路指導をしている。進路カルテは、1年次は第2志望まで、2、3年次は第3志望までの大学・学部・学科名と、その学科について調べたことを書き込む進路希望調査票のようなものだ。1年次に1回、2年次に2回、3年次に4回提出する。書けない生徒は、放課後に居残りをさせてでも、調べて書くように指導している。
 まずは進路カルテに大学名を書き、その大学について調べさせる。就職よりも近い将来にある進学について調べる方が、進路意識の高まりにつながる。実際、オープンキャンパスや大学見学に積極的に行くようになり、専門学校希望だった生徒が大学を意識し始めることもある。カルテへの記入を3年間積み重ねることで、それまでの考え方を振り返りながら、自分で進路を決められるようになる。
 1、2年次に進路ガイダンスを年6回ずつ行い、進路意識を醸成しつつ、大学についての調べ方を指導する。大学案内を何度も読み、ほかの大学と比べるよう指導している。
 AO入試や推薦入試を受験する生徒には、基本的に3年次の1学期までに志望校を決めるよう指導している。

■ 生徒の進路意識
 放っておくと、生徒はいつまでたっても卒業後のことを現実的に考えられない。芸能人や漫画家など、憧れやイメージだけで進路を考える生徒も少なくない。1年次から大学・学部などを調べさせ、将来について考えさせる仕掛けが必要だ。素直な生徒が多いので、大人が声を掛ければ、自ら考え、勉強も頑張る。面談では厳しい言葉を投げかけ、再考を促すこともしばしばあるが、それでも生徒はついてくる。

■ 保護者の意識
 本校の生徒は、決して経済的に余裕のある層ではない。保護者は、「4年間で数百万円という高い学費を払うのだから、ちゃんとしたところに就職できる大学でなくては困る」という意識が非常に強い。就職率の良さを理由に、専門学校を勧める保護者も多い。  わが子の進路について関心の低い保護者もいる。以前、指定校制推薦入試で合格したが、保護者が期日までに入学手続き金を納めなかったため、入学できなかった生徒がいた。保護者説明会は全員出席を原則とし、欠席者のために後日もう一度説明会を行うなどして、生徒の進学を応援してもらうための啓発をしている。

図表


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