特集 志望校はこう選ばれている

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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【寄稿 より深く高校を知るために1】
龍谷大学 入試部事務部長 若林浩文

丁寧なデータ分析で「弱い地域」を把握し
「強み」を伝える情報発信に取り組む

◎龍谷大学は、独自に地元・近畿地区の受験生の動向を分析している。その結果に基づいてアピールポイントを明確にし、志願者の新規開拓や理工学部の認知度アップを図るなど、データ重視の募集戦略を練っている。高校の進路指導を支援する情報発信も特色の一つだ。

教育内容、学生支援のPRで「ブランド志向」に立ち向かう

 浄土真宗の開祖親鸞聖人の精神を建学の精神とする龍谷大学は、2009年には開学370周年を迎える。「共生をめざすグローカル大学」を掲げ、新しい社会を創造できる有為な人材を育成すべく、教育・研究の充実など、様々な改革を進めている。
 キャンパスは京都と滋賀の3カ所にあり、文・経済・経営・法・理工・社会・国際文化の7学部、短期大学部、法科大学院と7つの大学院研究科を擁する。各学部とも多様な入試で個性あふれる学生を集め、社会人、外国人を含む現在の学生数は約1万8000人となっている。
 2002年度には、将来的な受験生の数と質の確保を目指し、多様化する受験生のニーズも踏まえて入試改革をした。以降、毎年見直している。
 2006年度入試では、数の確保が質の確保につながるという判断から、延べ5万人の志願者確保を目標として設定。受験機会を拡大するため、柔軟な併願制度を設けた。その結果、志願者数は一般入試(センター試験利用入試を含む)3万9041人(対前年比108.0%)、公募制推薦入試1万1252人(同154.7%)の計5万293人(同115.8%)となり、目標を達成した。改革は受験生からの支持を得たと判断している。
 2007年度入試では、最後まであきらめず本学にチャレンジする受験生のため、一般入試に3月日程(C日程)を新たに設けた。これにより、11月の公募推薦入試を皮切りに、1・2月の一般入学試験(A・B日程)、センター試験利用入試、C日程まで、受験機会が広がった。
 しかし、入試制度の変更だけでは、志願者の確保に限界があることも認識している。大手予備校が実施した受験生へのアンケート調査をみても、「志望校で重視したもの」のトップは「大学の知名度(ブランド力)」で、「卒業後の進路の有利さやOB組織の強さを意識している」と指摘されている。それを証明するかのように、2006年度入試では、難易度の高い大学に受験生が集中した。この傾向は今後も続くと考えている。
 こうした状況の中、本学をよく理解してもらうことが、募集活動では重要と考え、数年前から、伝統、実績、卒業生のネットワーク、教育内容、キャンパスの立地、学生支援体制など、大学の様々な情報を、受験生や保護者、高校の進路指導担当者に積極的に提供している。特に、受験生の地元志向の高まりを受け、本学の受験生の7割を占める近畿地区を重点エリアに定め、募集戦略を立てている。


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