特集 志望校はこう選ばれている

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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高校訪問に関する定説に異議あり

 「2way」による「クライアントニーズの具現化」を図るためには、エリアの教育事情だけでなく、人口、風土、歴史、産業、トピックスなどの情報収集も怠らないことが重要だ。出張先では、地方紙を読む、タクシーの運転手に景気について聞くなど、情報の積み重ねが役に立つ。
 部下から「話題をうまくつくれないがどうすればいいか」と相談を受けたときには、「メッセンジャーボーイになれ」とアドバイスしている。多くの高校を訪問すると、様々な進路指導の実態を把握できる。訪問先で「A高校ではこんな取り組みをして合格率が上がった」「B高校では土曜や夏休みを活用して、こんな成果を上げている」と伝えるだけで、十分話題となる。また、「例えば、地方紙でその高校が県大会で活躍したと知っておけば、会話のきっかけになる」とも伝えている。あらゆる情報を収集し、どんな質問にも答えられるようにすることが、私たち入試広報担当の責務だと思う。収集した情報は、できる限りホットなうちに課内全員に伝え、共有することを常に心がけている。
 一般的に「アポを取って、クラス担任に会うことが大事」と言われるが、私は反対だ。アポ取りを重視すると、日に3、4校しか訪問できず、1日の大半が無駄になる。5分でも時間をもらって2wayのコミュニケーションを重ねれば、飛び込みでも時間があるときにはきちんと対応してもらえるようになる。それが、私の経験に基づく確信だ。
 会う相手も、最初は入試に関して高校の受付窓口である進路指導部の主事(部長)の方がよいだろう。主事を飛び越えてクラス担任に会うということは、高校の進路指導システムを無視することになる。もちろん主事が不在であれば、学年主任やクラス担任に会っても問題はない。何度も訪問していれば、いろいろな教員と話す機会が増える。高校によっては「せっかく来られたので、入試前でもあるし、担任にも少し説明してください」と、学年団との質疑応答の機会を作ってもらえることもある。
 高校訪問には、教員を加えるべきとの意見にも賛成できない。本学では、基本的に職員だけで行く。教員は自分の学部について一方的に話すだけで、ほかの学部についての質問には答えられないという不満を、高校からよく聞く。これでは、2wayのコミュニケーションからほど遠いパターンとなってしまう。
 全入時代を控え、教員側も危機感を募らせており、希望者に高校訪問をしてもらうこともある。ただし、入試課が説明会などで多忙な6、7月など、時期とエリア、訪問高校を限定する。事後報告をきちんとしてもらい、フォローもする。教員には教育と研究に専念してもらい、その成果は職員がきちんと高校に伝える――これが基本姿勢だと考える。


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