つなぐ 高校・大学 第2回 奨学金は学びを支援する制度として大学選択の要因になっているか

松高全一

鹿児島県立鹿児島中央高校
教務主任

松高全一教諭


鹿児島県立鹿児島中央高校

鹿児島市内にある進学校。地元・鹿児島大学への進学者が多い傾向にある。2006年度入試では、国公立大学に270人、私立大学に延べ186人が合格した。

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
  PAGE 5/5 前ページ

支援不要の範囲内での選択が増加

■経済事情で進路を決める生徒は?
 本校に入学する時点で大学進学という目標設定はされているので、保護者の経済的準備はある程度できている。それでも、学費の点で保護者の国立・地元志向は強く、生徒もそれを感じている。生徒は、学力や将来の夢のほかに現実も直視し、志望校を選んでいる。経済的な制約が生徒のモチベーションにも影響し、上を目指さなくなるのではないかと危惧している。
 経済格差が教育の機会均等に影響を及ぼしているという側面は否めないが、本校としてはそうならない指導を念頭に置いている。

■大学独自の奨学金をどう思うか?
 奨学金を受けられれば、生徒にとって勉強への励みとなるのは確かだ。ただ、大学独自の奨学金制度は、優秀な学生の確保だけが目的のように思え、本来の奨学金の意義とは違うのではないかという疑問はある。研究など本質的な部分にその資金を活用し、大学教育を活性化してほしい。それが高校生にとって「学びへの誘い」になる。

■奨学金が大学選びに影響するか?
 学費は4年間を見通して考えるように、と生徒にも保護者にも伝えている。家計からの費用と奨学金の割合、将来の返還についても考えるようにと指導している。
 そのためか、本校では日本学生支援機構の奨学金の申し込みが減っている。返還時の負担を考え、無理して利用せずに、今出せる範囲の費用で通える大学を、という選択が増えているように感じる。大学独自の奨学金は結果的に利用するということはあっても、それがあるからといって大学を選ぶようなことはない。

図表


  PAGE 5/5 前ページ
目次へもどる
大学・短大向けトップへ