従来、工学部に進学していた層は、どこにどんな要因で流れているのか。
　１Ｐ目図１から、看護保健学系統が着実に志願者数を増やしていることが分かる。1992年度から2006年度の間にほぼ10倍と、目覚ましい伸びだ。６年制への移行で2006年度に一気に志願者数が落ち込んだ薬学部も、それまでは人気を集めていた。２Ｐ目図２で女子の理系志願状況を見ても、看護保健学系統は1992年度以降増え続けている。
　看護保健学系統の人気の要因は、先に挙げた工学部の「弱み」と対比を成す形で、分かりやすい。
　この学問系統は看護師、保健師など国家資格につながり、出口となる職業の中身が明瞭だ。人の役に立ち、社会に貢献できるというイメージの強さも、工学部と対照的といえる。
　雇用環境が景気にあまり左右されないことに加え、近年、高齢化の問題など、この分野での人材ニーズの高さを印象付ける情報が多い。
　ベネッセコーポレーション高校事業部情報本部の木野内俊典氏は、「高校生は、人材の需給バランスを意外とよく見ている。情報系学部の人気が落ちたときも、ＩＴバブルの崩壊が影響した」と話す。
　ただし、「高校生はメディアが伝える情報の表層的なイメージだけを捉えがち」との指摘も聞かれる。そのため、適性や本当にやりたいことと進路選択との間に、ミスマッチが生じることもあるようだ。
　文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール（ＳＳＨ）に指定されている愛知県立一宮高校の堀江昭進路指導主事は、「資格が取れるから、と安易に医療系学部を選択する生徒もいる。本当にやりたいことを突き詰めれば、例えば、工学分野から医学的な問題解決にアプローチできることに気付いたりする」と話す。
　これまでの内容を「工学部の３つのＣ」という観点から整理すると、図３のようになる。これを踏まえ、工学部が受験生にアピールするための方向性を、実際の大学の取り組み事例を交えて考えてみたい。