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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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「会社に大切に扱われている」技術者の実感を示すデータも

 受験生の資格志向には、どんなアピールが考えられるのか。
 JABEE認定プログラムのある大学はそれをもっとうまく広報すべきだという意見は、大学内外から聞かれる。JABEEの福田征孜専務理事補佐は、「認定プログラムは、技術力だけでなく、倫理観や社会貢献への理解、論文作成能力、コミュニケーション能力など、技術者にとって必要な能力の修得を保証する」と説明。2005年にワシントン協定に加盟し、修了者は国際的に通用する技術者に必要な基礎教育を終えたと認められるようになった。
 現状ではほとんどの大学が、「グローバルに通用する教育を受けた証明になる」など、認定機関側のPRと同様の広報にとどまっている感がある。理系学部への進学を考える一方で国際系にも興味がある、というような受験生への視線はあまり感じられない。
 岡山理科大学工学部の松下尚史助教授は、2006年2月に県内の高校で出前講義を担当。機械システム工学科が認定を受けているJABEEについて紹介したところ、「生徒が大変興味を持った」と、高校のウェブサイトで紹介された。同助教授は、「地方の大学でも、国際的に通用する技術者としての教育が受けられることを伝え、偏差値や従来のブランドとは違う選択基準を知ってもらいたかった」と話す。
 人材ニーズについて受験生にメッセージを発信する上で、工学部の出口の人材市場に関する情報を集め、分析することも重要だ。
 芝浦工業大学の大坪隆明学事部次長は、「不況時はSE採用が多かったが、景気回復の影響で今年度はメーカーの技術者の採用が増えた。求人が大幅に増えて内定時期が早まり、5月以降は、就職相談に来る学生が急に減った」と振り返る。
 総合人材サービス大手の(株)毎日コミュニケーションズが2005年に実施した「新卒における理工系人材ニーズ調査」(401社の採用担当者が回答)では、理系人材として今後ニーズの高い学科系統には「電気・電子系」「機械系」が挙げられ、特に製造業でのニーズが高まっているとする(図4)。

図表

 「技術者の待遇は良くない」というイメージを変えるデータも出てきた。(株)日経BPが、2006年6月に676人の技術者を対象に実施した調査で、「会社はエンジニアを大切に扱っているか」という問いに対して、「強くそう思う」「一応そう思う」と答えた人の割合は、合わせて54%(図5)。半数を超えたのは2001年以降の同調査では初めてだという。待遇改善を実感できる状況が生まれつつあるようだ。
 これら雇用や待遇の問題について、産業界と連携して実証的なデータを集め、分かりやすく示せば、保護者にもアピールできるだろう。

図表


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