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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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卒業生への評価が口コミで伝わり「選ばれる学校」に

 全国に多くの専門学校を持つ滋慶学園グループの一つ、東京スポーツ・レクリエーション専門学校(江戸川区)の理学療法学科は、高度専門士養成の指定を申請中だ。2005年度の開設時から4年制課程で教育。一般的な3年制と比べ、実習が1割程度多い。看護師や薬剤師などほかの医療専門職との連携(コメディカル)に関わる科目を充実させ、即戦力と高度な専門性を兼ね備えた人材の育成を目指す。
 同校では、非常勤を含む全教員が、同じシステムの下で教育力向上に取り組む。年に2、3回、教員がほかの教員に授業を公開する期間を設定。録画した内容を校長がすべてチェックし、優れた授業を教材に選び研修も行う。教員のモチベーションは、個別の評価が一定程度待遇に反映される制度によって維持されているという。
 新宿セミナーの田沢氏が、「理学療法士を目指す受験生が、大学と両方に合格したときに迷う専門学校」として挙げた社会医学技術学院(東京都小金井市)は、1973年創立の老舗校だ。
 山田千鶴子理学療法学科長は、関東の私立3年制専門学校の平均より1割ほど安い学費が人気の要因とみるが、そのPRも含め、広報にはほとんどお金をかけていないという。「これまでは極力、教育環境の充実に回すという経営方針で、ホームページもようやく整備しだした」。結果的に主体的に情報を集めて比較検討した者が来てくれる、と分析。医療現場での卒業生に対する評価が、口コミで伝わるようだ。「見学した病院でこの学校を勧められた、と面接で話す生徒もいる」。
 山田学科長は、「専門科目はもちろん、大学の教養科目に当たる基礎分野の内容も、ハイレベルな医療技術者の養成という視点で工夫している」と説明。接客術を教える「人間関係論」では、患者を力づけ奮起させるためのコミュニケーション能力を鍛える。「研究方法」では、客観的で正確なカルテを書けるよう、「実際に起きたこと」「伝聞による情報」「自分の見解」を書き分けるトレーニングを積む。
 ゴールを明確にしたカリキュラムで着実に力を付けさせ、専門学校には珍しく、国家試験対策講座は一切ない。一方、留年者は個別に指導し、確実に資格を取らせて送り出す。卒業予定者の50倍近い求人が集まり、ほぼ全員が介護施設に比べて人気が高い病院に就職する。「実習先としてそれぞれの特色を熟知している。早期離職を防ぐため、『ここはあなたには合わない』とはっきり助言することもある」。
 同学科の常勤教員12人中11人が同校の卒業生だ。「一緒に働く後輩や仲間を育てるという意識と結束が、『現場で求められる力は何か』という発想に基づく教育につながっている」。卒業生の研修も、卒業生が自ら企画して教員がボランティアで講師を務めるものを含め、活発に開かれている。


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