このツアーに参加した高校生の半数は３年生だったが、１人で参加した１年生もいた。大学までの交通費以外の費用は、すべて大学が負担。７割は大阪をはじめとする近畿地区の高校生だったが、岡山や長野、埼玉からの参加者もいた。
　当日のスケジュールは図１の通り。午前中はオープンキャンパスに参加し、午後からバスを使って大阪の街を観光した。

　学生はツアーの間、背伸びすることなく普段通りに振る舞うよう心掛けた。「高校生にとって、私たちの姿が大学のイメージそのものであり、いわば『歩く広告塔』の役割を担う。私自身、高校時代には大学での学びや一人暮らしに不安を感じていた。大学生活への期待感を高め、残された高校生活を充実したものにしてもらうために、高校生の抱えている不安や悩みにできるだけ応えてあげるよう心掛けた」と稲冨さんは話す。
　こうした学生の心遣いの中で、参加者は活気溢れる道頓堀や大阪の味を堪能したが、ツアーはあくまでオープンキャンパスの一環で、大阪観光大学の魅力を伝えることも重要だ。そこで、バスの中では学長へのインタビューや下宿生活の様子などをビデオで上映し、大学生活の雰囲気が伝わるよう工夫した。
　ホテルでは、学生と高校生によるディスカッションとグループ発表会を実施した。「本学の学びの特色はゼミ。その雰囲気を高校生にリアルに分かりやすく伝えたかった」と、黒田主任はその意図を述べる。
　ディスカッションでは、高校生を４グループに分け、それぞれに学生２人がファシリテーターとして参加。大阪の街や食などについて感想を述べてもらい、大阪をもっと魅力的にするアイデアを話し合った。高校生からは、「活気があって親しみやすい」といった意見が出る反面、「ごみごみしている」「マナーが悪い」といった意見も出された。
　議論は大いに盛り上がり、午後８時から１時間の予定だったディスカッションは、午後10時半まで続いたという。
　翌日の朝には、前夜に話し合った内容をグループごとに発表。高校生が大阪の街をさらに魅力的にするためのアイデアを披露した。「街の各所にくいだおれ人形の複製を設置して、街をきれいにする」「外国人観光客のために英語表記の案内板を増やす」など、高校生らしい斬新な案が提示された。
　終了後、「高校では絶対にできない経験だった」「ディスカッションは初めてだったので緊張した」などの意見が寄せられた。短い時間ではあったが、ゼミの雰囲気を味わうことができたようだ。緊張しながらも堂々と発表する姿は、学生にとっても刺激になったという。稲冨さんは「高校生がこれほど堂々と自分の意見を言えるとは思わなかった」と感想を述べる。