ここでは、優れた教育サービスの提供とマネジメント能力が学生の満足度を高めるという観点から、大学の安定的な経営においてＦＤ、ＳＤがどのような役割を果たすべきか考察したい。
　ＦＤは、教員集団の重要な役割と責務を支える制度で、教育サービスの質的な向上を図り、教育実践の機能を高める。 　ＳＤは、大学運営や教育環境の基盤を形成し、教育サービスの提供を支援する。大学職員は、業務を遺漏なく処理することも大切だが、ＳＤの観点では、大学のミッションを踏まえて業務全体の効率性やレベルアップを考えるマネジメント思考が重要だ。近年、大学運営における職員の役割が見直されており、その能力開発や啓発のための活動が盛んである。
　大学アドミニストレーターの活躍が、日本でも期待される。運営の指針を決定する上での経営陣や学長のサポート役を担う。大学の事業全体を横断的に点検・分析・評価でき、外部と交渉できる総合的な知識・能力・経験を備えた人物が理想的である。
　大学には、学生による授業評価、自己点検や第三者評価などを分析して教育サービスの改善・向上に努める姿勢と、具体的なシステムの導入が求められる。｢学生を大切にする大学｣を改革の柱として掲げ、｢学生の意見を尊重する、学費に見合った中身の濃い教育の提供｣＊14を目標にするのも有効だ。
　ＦＤ、ＳＤは、トップが経営的視点から主導すべきだ。学園として組織的に取り組み、スタッフに働き掛けるためには、経営陣の強いリーダーシップが必要だ。大学経営の戦略的思考には、教育の理想が内包されなければならない。トップは、明確なミッションをスタッフに説明し、外部に向けても公表していくべきである。
　トップは、教育・研究・経営に関わる政策を中長期的な視野で立案し、これらをマネジメントし、さらに検証・改善する義務と責任を負う。
　ＦＤ、ＳＤによる教育サービスの向上が他大学と競争する力を付け、差別化につながれば、経営が安定して「生き残る大学」になると考える。