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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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社会で活躍する上で必要となる最小限の条件

 諸外国でも「社会人基礎力」に相当する概念は、大学卒業者に共通に求められる汎用的な能力である「ジェネリックスキル」として重視され、既にその育成に向けた取り組みが始まっている。諏訪教授によれば、アメリカでは、『Newsweek』が社会人として必要とされる能力の頭文字を取ってまとめた“COLLEGE”が、学士課程教育の目標という考え方もある。すなわち、Communication Skills(コミュニケーション能力)、Organizational Skills(組織をつくる力)、Leadership(統率力)、Logic(論理力)、Effort(目的に向けて努力する力。計画力と実行力を合わせたようなもの)、Group Work(仲間と力を合わせていく力)、Entrepreneurship(起業家精神)の7つの能力だ。
 「学士課程教育の目標が、高度な知識の修得ではないことに注目する必要がある。アメリカの大学では、学部でリベラルアーツを身に付け、専門の勉強は大学院以上でという考え方が一般的だが、このアーツには「技術」「能力」といった意味がある。リベラルアーツとは『既存の考えや既成概念に左右されず(リベラル)に、自分の頭で考えられるようにする手法(アーツ)』ということであり、リベラルアーツを学ぶこと、すなわち“COLLEGE”に象徴される能力を身に付けることが学士課程教育とされている」
 日本では、諏訪教授が中心になり社会人基礎力を定式化した(表1)。

図表
出典/経済産業省ウェブサイト『社会人基礎力に関する研究会』(2007年9月現在)

 「社会人基礎力は、社会で活動するときに必要な能力に焦点を絞り、企業などの現場の声を生かしてまとめられたものである。指示待ち人間では困るから『前に踏み出す力』を、マニュアル人間でも困るから『考え抜く力』を、そしてほとんどの仕事は様々な人が協調して成り立つため『チームで働く力』を加えた。この3つを社会人基礎力と規定し、その内容を12の要素に分けて具体的に説いたものを提示したのである」
 3つの力に関しては、研究会での異論はほとんどなかったが、12の要素に関しては、様々な意見が続出し、まとめるのに苦労したと言う。
 「社会人基礎力は社会で活躍するための必要最小限の条件だ。仕事によって、例えば製造業ではチームで働く力が、知的産業分野では考え抜く力が重視されるなど、求められる力のバランスが違うのは当然だ。ただ、いずれにしても3つの力は不可欠ということで一致した。このように、多くの人が気付いてきたことを定式化し、育成すべき力を明確にした点に意義がある」


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