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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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正課、課外を問わずカリキュラムの工夫が必要

 大学においては、どのように「社会人基礎力」を育成していけばよいのか。諏訪教授は3つの方向性を示す。
 第1は、授業で社会人基礎力を高められるように工夫することだ。
 「学生が能動的に参加できるような問題解決能力養成型の実習タイプの授業を増やすことが重要だ。農学部に農場実習があるように、社会科学系の学問分野でも、社会における実習の機会をより多く提供すべきだろう。ただ、知識伝授型の授業も必要なので、大学や学問分野によってバランスを考えたカリキュラムとすることが望ましい」
 現実問題として、教員1人に対する学生数の多い私立大学では、実習タイプの授業を増やすことは難しいが、諏訪教授は、それも工夫次第だと言う。
 「アメリカでも大人数の授業があるが、必ず演習を設けている。大教室の授業でも、隣り合う学生同士で議論したり簡単な作業を行うペアワークを取り入れたり、少人数単位で行うグループワークを導入することによって、具体的なスキルを教えることができる」
 第2は、課外活動の意義の再認識だ。諏訪教授は課外活動を積極的に評価対象にすべきだと考えている。
 「運動部系の学生に対する企業の評価が高いのは、彼らの社会人基礎力が高いと経験的に知っているからだ。文武両道は大変だが、だからこそ人は育つ。場合によっては、課外活動に単位を与えてもよいのではないか。運動部の活動を一所懸命にした学生に体育の単位を認めているところがあるように、金融研究会やベンチャー研究会などを立ち上げて熱心に活動している学生にも、関連の授業単位として認めることを検討してもよいはずだ」
 課外活動には授業以外の学習活動も含まれる。諏訪教授は、特に予習課題が重要だとする。
 「社会に出たら正解のない問題にばかり直面する。それなら学生時代から正解のない問題に接して、自分の頭で考える訓練をした方がよい。アメリカでは学生が教員と激しい議論をする姿をよく目にするが、これは学生が必ず予習し、自分なりの解答を考えてきているから起こり得るのだ」
 第3は、学外活動も学士課程教育にきちんと位置付けることだ。その好例ともいえるインターンシップには、専攻分野との関連に関わらず単位を認めるケースが増えており、学士課程教育の一環として認知が進んでいる。
 「インターンシップで単位を与えるのならば、何カ月も何年もきちんとアルバイトを続ける学生にどうして単位を与えないのか。アルバイト体験は社会人基礎力の育成に有効であり、今後は学士課程教育の一環として位置付ける必要があるかもしれない。学外活動をどう学士課程教育に組み込むかは、今後の重要な課題といえる」


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