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うしおぎ・もりかず

うしおぎ・もりかず

◎1934年生まれ。東京大学教育学部卒業。東京大学助手、名古屋大学教育学部助教授、同教授、同学部長、名古屋大学附属図書館長などを経て、現職。主な著書に『大学再生への具体像』(東信堂)、『世界の大学危機』(中央公論新社)など

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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寄稿:教育力向上の新たな視点

教職員の移動による経験と知識の伝播が
大学の教育力を向上させる

桜美林大学大学院国際学研究科招聘教授 潮木守一

大学が受験生を選ぶのではなく、受験生が大学を選ぶ時代となり大学が変わらなければ生き残れない、という危機感が生まれた。
しかし、どう変わればよいのか、大学は試行錯誤の渦中にある。
そこで、国立と私立、それぞれの大学に所属した経験を持ち大学改革を推進してきた教育社会学者・潮木守一招聘教授に今後、大学はどのように変わっていくべきか、具体策を提言してもらった。

大きな反響を呼んだGPプロジェクト

 文部科学省による大学教育改革支援策の一つにGPによる補助金の支援がある。初めてGPが公募された時、予想をはるかに超える大学が名乗りを上げた。当時の文部科学省の担当者は「これほど大きな反響があるとは思わなかった」と驚いていたほどだ。なぜ大学はGPに積極的に応募したのか。背景を整理すると、次のようになる。
 第1の要因は1991年の大学設置基準の大綱化だ。これにより、大学は今まで以上に自由にカリキュラムを組めるようになり、キャリア教育や導入教育など、各大学の教育は多様化した。
 第2に、補助金の配分方式が変わったことだ。それまでは、学生数と教員数に従いほぼ機械的に配分額が決められていた。それが、大学個々の実績が評価され、その結果に応じて補助金が配分されるようになった。大学からすれば、GPは外部資金獲得面から見逃せないチャンスである。金額の多寡もさることながら、採択による宣伝効果も大きい。もしかしたら、一般助成金も科学研究費補助金獲得件数とともに、このGPの獲得件数で変わるかもしれない、と考えたのだろう。
 第3に、18歳人口の減少とともに大学間競争時代が到来し、どの大学も新機軸を打ち出さなければ志願者を獲得できなくなった。学部・学科の名称に工夫を凝らすだけでなく、教育内容を見直し、その独自性を正面に立て、互いに競い合う時代となった。


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