企画1

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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全学共通教育の改善に向けた取り組み

 1 カリキュラム設計と科目審査
 2004年度から着手したカリキュラム設計と科目審査においては、各専門委員会・部会が担い、履修状況、成績分布、授業評価などの詳細なデータ分析を基に、全学共通科目にふさわしい科目の開講および履修者数に応じた時限数の調整、シラバスの改善などに取り組んでいる。その結果、理系基礎科目の見直し、文系学生向けの自然科学系科目の充実、学力の多様化に対応した科目の開講などの成果が得られた。
 英語においては、2006年度から「一般目的の英語」から「学術目的の英語」へ変換した。自律学習型CALL*1の正規授業への大幅な導入、アカデミックリーディング、ライティングのほか、オーラルプレゼンテーションやテストテイキング等、少人数の対面型授業を設け、充実を図っている。

2 授業評価・アンケート調査の活用
 全学共通教育における授業評価やアンケート調査は、各専門委員会・部会を構成する教員自らが主体となって実施している。評価内容の企画・立案、単に個々の授業の評価のみならず科目群の在り方まで含め、学生・教員のニーズや学習状況・教育効果を把握するため、積極的に取り組んでいる。この4年間で30近くの評価を実施し、得られた分析結果は、各部会でのカリキュラム設計に反映されている。

3 KULASISの開発
 KULASIS*2とは、全学共通科目のあらゆる情報をウェブ化し、迅速かつ正確な情報伝達と学生・教員への支援やサービスの向上を目指して開発を行っているシステムの名称である。全学共通科目を履修する約8800人の学生は、万全なセキュリティ対策の下、学内外を問わず、パソコン・携帯電話から教務情報の確認・履修登録・採点確認等ができる。多い日にはログイン件数が1万件を超え、学生にとって必要不可欠なものとなっている。

4 学生のための学習環境の整備
 老朽化した建物、講義室や実験室の全面改修、AV機器の更新、大学院生を配置した学生用自習室の開設など、学習環境を充実させるとともに、リフレッシュコーナーの設置(写真)、京都大学初の歩行者天国の設定、国立大学初のコンビニエンスストアの設置などにも取り組んだ。
 これら全学共通教育の予算は、国立大学法人化前と同様、1・2年次の学生当たり積算校費相当分プラスアルファの約2億円となる。これで、敷地面積8万3964平方メートル、80を超える教室・実験室、建物管理面積1万9375平方メートルなどの施設設備の維持管理費、光熱水道費、実験実習経費、授業準備経費、人件費(非常勤講師を除く)、事務経費等々を賄う必要がある。予算のほとんどはこれらの経常的経費に費やされ、新プロジェクトの実施、実験実習設備、AV機器等の更新は、総長裁量経費等の学内の競争的資金に頼らざるを得ないのが現状である。ちなみに2006年度の決算額は、非常勤講師手当1億3000万円を含めると、約5億円となった。

*1 Computer Assisted Language Learningの略称
*2 Kyoto University's Liberal Arts Syllabus Information Systemの略称

図表

リフレッシュコーナーは、イタリア製の椅子やテーブルが配置され、学生が集う人気の場所である

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