入学者の学力と目標を考慮しつつ
学士課程教育の改善を図る

　中央大学商学部は1999年度から高大連携を本格化させ、多彩なプログラムを次々と展開している。その一つである「実学理念に基づく高大接続教育の展開」が2004年度の文部科学省の特色ＧＰに採択された。「高大接続教育」「入学準備教育」「学部教育」の３つを体系化したプログラムを実践している（図１）。

　成果を挙げている取り組みの一つに、1999年から続けている「プレ-スチューデント（ＰＳ）・プログラム」がある。これは「入学準備教育」に位置付けられるもので、推薦入試や特別入試で入学が決まった高校生約500人が対象となる。
　入学手続き後にＰＳプログラムの課題冊子と参考資料が送付され、12月から３月までの間に全３回のレポートを提出し、添削を受ける。課題には、指定のテレビ番組を視聴してのレポート作成、新聞記事や書籍を読んでの小論文作成、英文の長文読解などがあり、本腰を入れて取り組むことが求められる（表１）。そのため、参考資料に「文章の書き方」「情報収集の準備とフォロー」など課題への取り組み方を詳細に記し、大学での学びとはどういうものかを説明している。

　　同大学商学部の教員とＰＳプログラムを共同開発した外部機関の研究所が、提出された課題を添削してコメントを書き加え、約１カ月後に返却する。前商学部長の酒井正三郎教授は、「答えが１つしかない受験勉強とは対照的に、立場や視点が異なれば答えもたくさんあり得る、というのが大学の勉強。そういう観点が高校生に伝わるように添削している」と話す。
　「君のユニークな発想は、大学入学後に役立つ」といった励ましや、「ＰＳプログラムは大変だったが、大学４年間の勉強が楽しくなる」といった前年度以前のＰＳプログラム経験者の声をコメントとして同封するなど、高校生のモチベーションを高める工夫も凝らす。課題提出は必須ではないが、例年、約半数の入学予定者が３回とも提出している。
　同大学商学部は毎年、ＰＳプログラム受講者にアンケートを取っている。2006年度のアンケート結果においては、９割以上が「このプログラムを受けてよかった」と回答した。「このプログラムで大学の勉強がどういうものか理解できたので良かった」という声が数多く寄せられている。
　また、ＰＳプログラムの成果は数字に表れている。１年次のＧＰＡを追跡調査したところ、ＰＳプログラム修了者のＧＰＡは、全学部生の平均値に比べて高いことが分かった。ＰＳプログラムで表彰された優秀者十数人のＧＰＡは、さらに高得点という結果が出ている（図２）。
　高校までの受け身の学習態度とは異なり、主体的な姿勢が求められる大学での学習。この切り替えに入学前の早い段階から取り組むことが、教育効果の向上につながっているといえよう。