次々と高大連携プログラムを進めてきた中央大学商学部だが、酒井教授は「特色ＧＰに採択されてから４年が経ち、他大学の『後発性の利益』が目立ってきた」と言う。同大学商学部などの先行事例を基に、他大学がさらに優れたプログラムを導入してきたからである。2008年度以降の高大連携プログラムについて、酒井教授は「今度はわれわれが後発性の利益を享受し、再びフロントを走れるような仕組みを現在、検討している」と話す。
　すでに方針が固まっているのは、入学後の学士課程教育の改革である。その一つに、2008年度からのセメスター制への大幅移行が挙げられる。これに伴い、高大の橋渡し役ともいえる１年次の少人数ゼミ「ベーシック演習」に通期だけでなく半期のセメスター制も取り入れ、より多様な学生のニーズに応えていく予定である。
　もう一つは、「国際地域ビジネスプログラム（仮称）」の開設。「アカウンタント」や「ビジネスイノベーション」など、資格取得や情報技術習得を目的に開講している「プログラム科目」に、新たに加える予定である。酒井教授は、「特に高大接続のプログラムで入学した学生は、資格取得など明確な目的を持っている傾向が強い。その受け皿を拡充するのもねらいの一つ」と語る。この新プログラムにおいて、海外へのセメスター留学や９月入学などの導入を検討中である。
　高校生の入学を前提にした高大接続教育については、これまでさらなる検討を重ねているＧＡをはじめ、ＴＡ、ＴＣの各プログラムで、公立高校と積極的に提携してきた。
　「私立・公立の壁なく提携していきたい。条件が合えば、いろいろな可能性が出てくるだろう」（酒井教授）と、今後も変わらぬ方針を貫く考えである。
　高校と大学だけでなく、中学校まで含めた接続教育の方法も模索している。2006年７月には、付属の中央大学高校とその隣に立地する東京都文京区立第三中学校との連携が紙上をにぎわせた。以前から同中学校の生徒のみを対象にした「特別推薦枠」を設けているが、応募資格基準の関係から、まだ実績はない。現在、今後の連携の在り方を探っている。
　中央大学は、併設の中学校を持たない。難関私立大学の中ではまれなケースである。そこで、同大学附属高校（東京都小金井市）に中学を併設する構想も浮上している。
　「大学中心の大学から、中等教育、初等教育を含めた総合学園化が時代の流れ」（酒井教授）という方向性のもと、併設中学を含めた中高大10年一貫教育体制の構築も視野に入れている。