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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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教育機関の連携によりプレゼンスが向上

 広島市教育委員会は、授業方法の向上を目的として毎年9月から11月にかけて同市立高校の公開研究授業を行っている。この機会を利用し、2006年には加盟大学から30人弱の教員が高校の授業研究に参加した。「高大連携委員会」における意見交換の中から生まれた案である。高校の授業や生徒の実情を把握し、高大連携事業だけでなく、学生に対する教育にも生かすことができる。大学と高校、行政の相互理解の深まりに伴い、事業に新たな広がりが生まれたという好例だろう。
 教育ネットワーク中国に対する地域の信頼も高まっている。2007年度から中国新聞社や広島銀行など地元の有力企業が賛助会員として加盟。1社3万円の賛助会費を納め、同ネットワークの運営を支援する。2008年度には新たに広島電鉄(株)や(株)モルテン、広島県商工会議所連合会などが加盟する予定である。
 地方の企業にとって、地元の大学は重要な人材供給源であり、人材育成の面でも大学の取り組みに関心を持っている。同ネットワークは加盟大学の総定員数が5万人を超える組織。一つひとつの大学は大きくなくても、連携による教育活動の活性化に寄せる地域の期待は大きい。

喫緊の課題は人材と資金の確保

 今後の課題は、組織を支える人材と資金の確保である。教育ネットワーク中国の運営は、会員大学・短大からの年会費15万円と、単位互換に参加する大学が納入する学生1人当たり50円の比例会費、広島・呉市教育委員会、私立中学・高等学校協会からの会費によって支えられている。広島県立生涯学習センター内の事務局は非常勤職員3人のみによる運営のため、事務処理能力を考えると事業拡大は限定的にならざるを得ない。
 高大連携事業についても、改善すべき点は少なくない。公開授業は大学の正規科目であるため、高校側にとってはどのように生徒に受講時間を確保させるのかが大きな課題である。
 ノートルダム清心高校は、公開授業・講座を進路指導とどのように結び付けていくのかを模索している。橘教諭は「生徒にとって単に行事の一つとして終わっている感が否めない。公開授業で得たことを生徒がどのように消化し、次のステップにつなげるのか。高大連携事業と進路指導を有機的に結び付けていく工夫が必要である」と述べる。
 単位互換事業に不参加の加盟大学があるなど、加盟大学がすべての事業に参加しているわけではない。
 「大学競争時代にあって、大学間の利害を調整し、一致点を見いだすのは簡単ではない。しかし、ネットワークのプレゼンスを今以上に高めるには、会員の足並みをそろえていくことが大切だ。相互理解を今以上に深め、一歩一歩前進していきたい」と市川代表幹事は今後の抱負を語る。
 2004年に「全国大学コンソーシアム協議会」が発足した。先陣を切って県の垣根を超えた連携事業を推進してきた教育ネットワーク中国の試みは、そのモデルケースとなるであろう。


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