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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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大学生の姿を見て心構えを身に付ける

 私立女子校のノートルダム清心高校は、進路学習の補完として、教育ネットワーク中国の公開講座を活用する。2007年には38人が登録した。同高校進路指導主任の橘泰範教諭は、「本当に学びたいことを見つけられない生徒が少なくない。生徒自ら大学に出向いて授業を受けることは、視野を広げる絶好のチャンス」と話す。
 また、いわゆる教育困難校であったある高校では、公開授業・講座の受講を必修とした結果、生徒の進学意欲が高まり、進学実績が向上したという。
 同ネットワークが行った高校教員へのアンケートには「大学の環境を体験したり講義を受けたりすることで、専門知識の修得、進路選択の材料収集、勉強への動機付けができる」など、同事業を積極的に評価する回答が見られる。受講者数が増加傾向にあるのも、高校側が連携事業によるメリットを認識しているからだといえる。
 一方、高校生に対するアンケート調査の結果からは、学習意欲や進路意識の向上だけでなく、高大の「接続」の観点からも同事業が有効に機能していることがうかがえる。公開授業を受講した高校生からは、「大学生と同じ講義を受けてレポートを提出したことが、大学の雰囲気を知る上で役立った」「普段の授業とは違う学び方をしたので、授業に対する考え方や姿勢についてあらためて考えさせられた」などの感想が寄せられた。橘教諭は、「大学の講義を受けて『頭で考えていたことと実際に話を聞くのではだいぶ違う。大学に行ってもっと多くのことを吸収したい』と気持ちを引き締める生徒が多かった」と話す。

高大連携委員会を通し相互理解を深める

 連携事業の活性化のためには、大学と高校の相互理解が不可欠である。教育ネットワーク中国は、各大学、高校、教育委員会の代表から成る「高大連携委員会」を設け、定期的に情報の交換・共有をする。参加した生徒の様子や高校の同事業への取り組み状況、科目の内容や制度上の課題などについて高校側の意見を求め、事業の改善を図る。例えば、2007年度から、夏以降の公開講座については5月に募集をするようにした。「募集期間が短い」という高校側の意見に応えたものである。
 「中学生にも講義を聞かせたい」という高校側の要望に応じて、2006年度から年1回の「中高大連携公開講座」を開催。大学教員が高校に出向き、中学・高校生向けの講座を開く。2007年には備北地区の3高校を会場にして計56科目を開講し、延べ1302人の中学・高校生が受講した(22ページ図1)。
 「大学は中学生や高校生に自学の教育の魅力を伝えられる。高校は自校で大規模な公開講座を実施することによって、中学生に対して自校の指導力をアピールできる。まさに“Win−Win”の関係が成り立つ絶好の企画」と市川代表幹事は語る。
 公開講座には、専門的な内容の講座のほか、中高大接続を視野に入れた「キャリア」に関する講座を設けた。社会の在り方、働くことの意味、より良い大学生活の過ごし方などをレクチャーし、進路選択に生かしてもらうことがねらい。通常の公開授業・講座では、大学の教育内容や魅力を伝えることが優先されるため、キャリア教育までは手が回らない。この共同開催の機会に、中高大の「教育の接続」という教育界共通の課題に取り組む姿に、単なるPRにとどまらない教育の質の向上を目指す大学側の思いが見える。


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