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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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学生自身の成長と大学への帰属意識の確立

 「キャンパス大使制度」には、学生自身の成長につなげたいという意図がある。訪問に際してのマニュアルはあるが、行動を細かく指示してはいない。実施内容の説明会でも教員が30分程度、要点を話すだけ。学生自らの創意工夫で、高校生に大分大学を紹介してほしいからである。
 高校側へのアポイントの取り方は学生に任せている。そのため、高校側との日程調整が難航すると、途中で「キャンパス大使を辞めたい」と漏らす学生が出てくることもある。その際には、大学教員が学生個別に高校とのやり取りに関して状況を聞き、アドバイスをする。
 宮町教授は、「アポイントの取り方一つをとっても、学生には勉強になる。本学の代表として、高校教員や高校生に対して、友達と話すような口調ではなく、きちんと敬語を使ったり、高校生に分かりやすく説明したりする工夫や経験は、学生自身の成長につながる」と話す。

図表

 「キャンパス大使」の取り組みには、当初は意図していなかった効果も表れている。キャンパス大使を経験した学生に同大学への帰属意識が強くなる傾向が見られたのである。
 「都市部の名門私立大学の学生や卒業生には、建学の精神や伝統に裏打ちされた大学への帰属意識がある。例えば、大学スポーツ観戦で、現役学生から70代の卒業生までが一緒に肩を組んで応援するという大学がある。地方国立大学にはあまり見られない光景である。ところが、大学を代表するキャンパス大使を経験すると、学生の中に愛校心のようなものが生まれてくるようだ」(大分大学入試課長)
 学生は、高校生に話す内容を考える過程で「自分はなぜ大分大学に通っているのか」「この大学の良さはどこにあるのか」といったことを考えざるを得ない。こうしたことが、自分が通う大学の良さを自覚し、帰属意識や愛校心を持つ、大きなきっかけになっているようである。
 「大学の教育内容にあまり関心がなかった学生に、『大学にはもっとしっかり教育してもらわないと困る』という意識も芽生えるようだ。『休講万歳』と思っていた学生が、『自信を持って紹介できる大学になってもらいたい』と、徐々に感じるようになってきていると思う」と宮町教授は語る。


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