同大学は、「修道スタンダード」を通して、どのような能力を持つ卒業生を育成しようとしているのか。
　「修道スタンダード科目」は、「ファーストイヤー・セミナー�T・�U」「英語」「情報処理入門」「キャリア形成支援」「広島学」の５科目群・６科目の構成で、全学統一的に履修させる。柱は「英語」と「情報処理入門」だ。高橋副学長は「昔から学問の基本とされてきた『読み、書き、そろばん』が、今は『語学、パソコン』になった。この２つの能力の保証が急務と考えた」と話す。
　「英語」は、１・２年次で合計６単位を必修とする。パソコンとインターネット環境があれば、どこからでもアクセスできるeラーニング教材を用い、毎週の課題をこなす学習が中心だ。修道スタンダードの開始に伴い、全学生にノート型パソコンを必携としたねらいの一つが、この学習の導入だった。評価は年２回のTOEIC® IPテストを受験させ、その結果で行う。最低ラインを400点とし、これを下回ると原則として単位が与えられない。
　同様に、１年次必修科目の「情報処理入門」では「Word」「Excel」ともに３級（中央職業能力開発協会主催「コンピュータサービス技能評価試験」）の合格が、単位修得の条件の一つだ。
　１年次前期に行われる「ファーストイヤー・セミナー�T」では、講義を受ける姿勢やノートの取り方、書籍の読み方など、大学での「学び方」を学ぶ。１年次後期に行われる「ファーストイヤー・セミナー�U」の内容は、各学部・学科での「学び方」が中心となる。
　これらの学びを支えるために「学習支援センター」を開設。２、３人のアドバイザーが常駐し、履修科目の選び方や勉強の方法、学習上の悩みなど、幅広く相談に応じている。
　「2007年度は延べ3000人以上がこのセンターを利用した。レポートの書き方などが分からず、センターに聞きにくる学生が多かったようだ」と、高橋副学長は話す。

　「修道スタンダード」は2008年度で２年目を迎え、課題が浮き彫りになってきた。最も大きな課題は、学生の英語力の低下が大学側の予想以上に大きかったことだ。
　高橋副学長は「eラーニングによる英語の学習成果は、学生の自主性に大きく左右される。高校時代から英語が苦手な学生は、学習が深まりにくく、TOEIC®の目標スコアに達しないことが多かった。現在、具体的な対策を検討している」と課題と対策について述べる。
　英語同様、日本語によるコミュニケーション能力の低下も目立つ。単語だけで会話を構成し、正確な表現で会話ができない学生が見受けられるという。その対応策として、「修道スタンダード科目」に関連する科目をさらに充実させる考えだ。
　「課題があるのは事実だが、『修道スタンダード』によって卒業生に求める能力を具体化したことにより、学生が抱える課題も可視化され、対策を講じやすくなった。『修道スタンダード』を起点に、カリキュラムの再編成を進める方針だ」と、高橋副学長は今後のビジョンを示す。