「３つの方針」は、（１）目標としてのディプロマ・ポリシー（ＤＰ）の設定、（２）現状認識と選択としてのアドミッション、（３）両者を結び付ける「表現手段」としてのカリキュラム、の順に考えられるべきであると考える。
　本学のような中規模の私立大学では、あくまでＤＰが起点であり、終点であると考えたい。本学では教育目標を「自立心、対話力、創造性」と設定しているが、まず、学内のあらゆる部門に、この目標を意識して活動するよう働きかけ、学生・教員・職員一体となった、これらの目標の意識化と浸透が重要である。
　ＤＰをカリキュラムに浸透させる方法は、第一に全学共通科目のＤＰという点からの再構築であろう。全学共通科目の内容、授業形態をＤＰという点から位置付けし直し、シラバスなどに明記する形で、学生・教員にその旨を意識させた上で授業を行うのが望ましい。
　本学の場合では、「対話力」のための「日本語表現」といった科目の新設や外国語科目の充実などであり、「自立心」育成のための「女性学」などの講座である。その際、ＦＤとも関連するが、学習の方法、レポートの発表の仕方など、授業形態にも「３つの方針」が生かされることが重要である。
　第二に、専門科目の中でも、科目の運営の仕方、具体的には、レポートの書かせ方、ゼミなどグループ研究や発表などにＤＰを意識的に組み込み、そのことを全学共通科目と同様、シラバスなどで明確に示すことであろう。それぞれの科目に献立の栄養表示のように、教育目標の組み込まれ方を、ある程度明示するのも方法である。
　これらを実現させる手段としての組織は、やや困難を伴うが、ＤＰを実現するための独自組織でありながら、学部・学科、教務関係など各組織と連携できる柔軟な形態の組織が良い。主要な人材は一部他の部門と兼任し、委員会も異なる部門がテーマによっては合同で議論する、というように、組織を柔軟に運営して、組織が硬直化しないように工夫することが重要である。
　組織的には、学科や学部という四肢に分かれた骨と筋肉に対する、神経と血管の役割を担う組織形態が望ましい。ＤＰはこれによって大学全体に浸透するはずである。