同大学には、全学の教育組織が３つのポリシーの下に教育改善を行う形が整っている。
　しかし、各学部・学科が示している３つのポリシーを比較すると、そのレベルや考え方にかなりの差があるのも事実。国家試験に対応する学部や、外部評価を受けることに慣れている学部などでは、３つのポリシーの位置付け・方向性は明確で、教育目標との関係にも整合性があるが、そうでない学部・学科もある。「教育マネジメントサイクル」を実質的に回していくのは各学部・学科であり、そこから出されたポリシーに対してＦＤ推進委員会から注文を付けるわけにはいかないというジレンマもある。

　同大学の３つのポリシーは、活動報告書を通して広く公表されている。今野教務部長は「各学部・学科の取り組みが比較されることにより、３つのポリシーのとらえ方はもちろん、ＰＤＣＡサイクルによる改善活動に関しても、自発的に進めてもらうことが期待できる」と話す。
　実際、この教育マネジメントサイクルが機能し始めてから、学内ではいくつかの変化が生まれた。例えば、学部の教育目標や３つのポリシーを明記し、その学部に関連する学問領域の学び方などをまとめた小冊子の作製。新入生向けに配付する動きが広がっている。また、教員が３つのポリシーを踏まえた上でシラバスを記述するようになり、組織としての教育活動が活発化。さらに、学内のＦＤ機運の高まりに呼応して、職員の提案による全人教育「福大生ステップアッププログラム（転換教育、人間教育、キャリア教育）」も2006年から始まった。
　今後の課題として、今野教務部長は「ＦＤ活動への必要経費が予算措置され、各教育組織のＦＤ推進の動きが活発化している。この中には他学部の参考になるものも多く、全学で情報を共有する仕組みをつくることを考えていきたい」と話す。
　2008年４月には、大学設置基準が改定され、学部・学科の人材養成の目的の明確化やＦＤの義務化などが盛り込まれた。これが追い風となって、同大学の教育マネジメントサイクルは、いっそうスムーズに進んでいくことだろう。