まず、本学（京都工芸繊維大学）の組織を説明しておこう。入試課は一般入試だけでなく、留学生、３年次編入、大学院、大学入試センター試験等のすべての入試を管轄している。
　入試広報に限定すると、入試課は主として、入試関係ホームページの改訂、大学案内パンフレットの作製、学生募集要項の作製、オープンキャンパスの設営・運営、各地区で開催の合同説明会への参加等を担当している。一方アドミッションセンターは、ＡＯ入試の実施、高校内進学説明会への参加、自主的な高校訪問、アドミッションセンターホームページの改訂、オープンキャンパスでの個別相談、マスコミ・進学情報誌等への対応・執筆などを担当している。合同で協力実施していることには、年２回行っている入試研究会がある。
　入試課職員とアドミッションセンター教員に組織が分化しているように思われるが、本学の場合、現在は比較的良好な関係が保たれていると思う。
　広報において一本化できない理由としては、（１）勤務形態の違い、（２）広報以外の業務内容の差、が挙げられる。教員は自由出勤制であり、残業は付かない。職員は勤務時間が決められている。また、アドミッションセンター専任教員は授業（講義）を担当する場合もある。広報以外の業務内容も、詳細には触れられないが、機密を要することが多い。そのため、学生募集業務を教員・職員同一業務でまとめることは、互いの業務意欲を高めることにはならないと思われる。
　一般的に、教員は教育・研究活動、職員は大学運営という既成の業務分担が実在している。あえて一本化するよりも、互いの役割分担を確認し、協力体制を継続することが重要と考える。

　学生募集広報活動の基本は、顧客第一主義と志願者確保である。入試課職員とアドミッションセンター教員がこの基本方針を互いに理解できていれば、大半の課題は解決できる。特に、それぞれのトップは基本方針を理解していなければならないと思う。しかし、一方がそれ以上に自分たちの手間や時間を優先させると、その関係は歪になってしまう。過去にそれに近い現象が起きたことがあった。　
　日常の対話も重要である。対話の中に信頼関係が生まれる。互いの強み・弱みも把握できる。そうすれば、自然に重要事項や多忙期の相互協力も可能になる。
　例えば、学内の人脈に関しては教員よりも職員の方が精通している。各課程（学科）への依頼事項は入試課を通じた方がはるかにスムーズに運ぶ。また、学内トップからのデータ要請は入試課に依頼があるが、全国の入試や進路指導情報などは、アドミッションセンターの方がはるかに収集しているし、その情報がどこにあるかに精通している。互いの持ち味を生かすことができるのも、日常の円滑なコミュニケーションの恩恵であると思う。