自己点検・評価は、どのような教学改善に結び付けられているのか。
　経済学部ではカリキュラムを見直し、特に初年次教育に力を注ぐようになった。例えば、１・２年次の必修科目「経済と経済学入門 Ａ／Ｂ／Ｃ」では、学部所属の経済学系の全教員が綿密に話し合って授業プランを作成し、担当教員９人は授業ごとにレジュメを交換し合う。教育成果については、経済学系の全教員が学部基礎教育部会と話し合って、次年度の改善につなげている。
　小野主幹は、「各学部において、自己点検・評価をＦＤ活動につなげる動きが徐々に強まっている」と、教員の意識の変化を指摘する。ただ、関西学院大学のＦＤ活動は基本的に学部単位のため、ＦＤに精通したリーダーシップのある教員がいない学部では、取り組みの勢いが弱い。全学的なＦＤ活動の充実は今後の課題だという。
　ＰＤＣＡサイクルの一層の強化に向け、現在、Ｐｌａｎの強化にも取り組んでいる。同大学には、歴史的な経緯により、（学）関西学院による「基本構想」と、大学による「中・長期計画」という２つの将来的なビジョンが並存している。そのため、全体的な方針にぶれが生じ、学院と大学のＰｌａｎに一貫性がないという大きな課題が、自己点検・評価の実践を通して明らかになった。そこで、2008年度には、この２つの計画を一本化した全学ビジョンである「新基本構想」について、策定委員会を中心に全学が一体となって検討している。
　ＰＤＣＡサイクルと密接な関係にあるのが、定量的な計測だ。大学の活動状況を数値で表すことによって、目標は具体性を、評価は正確性を増すからだ。それによって、ＰＤＣＡサイクルの有効性が一層高まる。
　同大学がめざしているのは、誰の目にも明らかなデータを基にした教学マネジメントだ。選抜方式や所属学部・学科、カリキュラム、留学経験など、学内に存在する多様な要素に対し、どのような要素を選択をした学生が、どのような結果（進路や満足度など）を得るのか。入り口から出口までを数値で追い、データ分析をしてマクロ的な傾向をつかめば、次に改善すべき点が見えてくる。
　小野主幹は「今はデータベース化に向けたインフラがようやく整った段階だ」と話す。今後、データベースのさらなる進化と、より戦略的な活用によって、ＰＤＣＡサイクルをより緻密にかつ客観的なものとし、それを軸とした教学マネジメントを進めていく考えだ。