2008年6月、山形大学と立命館大学の「包括的協力協定」の締結式が行われた。連携の発端は、同年2月、立命館大学の事務職員、新野豊氏がFDに関する情報交換などを目的に山形大学を訪問したことにさかのぼる。その席で山形大学の小田教授が包括的な連携の話を新野氏に持ち掛け、それぞれ持ち帰って検討。協定の締結に至った。
　「地域間、ならびに国立・私立という壁はあるが、相違から学べることは多く、メリットも大きい。今回は、むしろその異質性が、協定締結の促進材料となった」と小田教授は振り返る。両大学ともに、「学生が主役となる大学創り」（山形大学）、「学習者を中心とした教育」（立命館大学）という学生中心の教育方針を掲げていることも、協定の締結がスムーズに運んだ大きな理由だ。
　初年度は、「学生交流」「職員交流」などに取り組む。学生交流では、両大学が3日間、5〜10人の学生を互いに派遣し、授業を受けさせる。学生は、他大学の授業を受けることにより、初めて自分が在籍する大学の授業を客観的に評価することができる。新たな視野による授業の見直しや改善に向けた提言をするなど、大使的な役割を担う。そのため、ほとんどの費用を大学が負担する。
　派遣期間中、学生は一般民家やキャンパスに滞在し、国内の異文化交流を体験する。これは、地域社会の中での活動に力を入れてきた両大学にとって、今までの地域活動を見直し、新たなアイデアを得るきっかけともなる。今後、「国内留学」を通して、異なる文化圏に住む学生の評価や提言を材料にし、互いの活動を改善していく。
　一方、職員交流においては、若手職員がキャンパスを行き来し、共同の作業グループを編成する。大学が抱える課題についての検討や改善提案を行う予定だ。
　交流の一環として、2008年7月に、山形大学の結城章夫学長が立命館大学朱雀キャンパスで講演し、学生と対話する機会を得た。同年10月には、立命館大学の川口清史学長が、山形大学で講演する。
　将来的には、学生の「国内交換留学」による単位互換制度や、職員の長期間の交換制度も視野に入れているという。連携する領域に制限は定めず、さまざまな可能性が眼前に広がっている。