2007年夏、広島文教女子大学から「SACLAと同等か、それ以上の設備と教育システムを提供してほしい」という依頼を受けた。東北大学などのケースとは大きく異なり、SACLAの機能を丸ごと複製する取り組みだ。
広島文教女子大学は、既存の美術棟を約3億円かけて改修、SACLAと同じ機能を備えた「BECC(Bunkyo English Communication Center)=ベック」を整備。そこに、神田外語大学は外国人教員6人を常駐派遣している。2008年度は1年次に必修の英語の授業を完全受託、2009年度からは2年次の英語の必須授業も受託するため、派遣教員を増員する予定だ。
この連携には、大きな課題があった。神田外語大学に入学してくるのは外国語学習が好きな学生ばかりだが、広島文教女子大学では英語が好きな学生は約3割にとどまり、英語に苦手意識を持っている学生が約3割に上る。神田外語大学企画部の飯田泰司部長は「本学と全く同じ手法では対応できない。ニーズに応じてカスタマイズし、アンケートや学力調査などを通して、常にブラッシュアップしていく」と話す。
神田外語大学は外国人教員を派遣すれば、その分欠員が生じ、新たに教員を採用しなければならない。しかし、英語教育関連学部のある海外の大学から、長年にわたって教員を採用してきた実績があるため、スキルの高い教員を速やかに確保することができる。
このような他大学へのソリューション提供は、神田外語大学にどのようなメリットをもたらすのだろうか。佐野隆治理事長は、次のように語る。
「本学の学生を相手に成果を上げている『英語教育』が、学力や意識の異なる学生にも広く通用するのか疑問もある。他大学で成果が思わしくない部分があれば、新たな手法を開発していかなければならない。他大学に英語教育を提供することによって、普遍的な教育システムをつくり上げていくための新たなノウハウを構築できる」
このような考えの下、他大学との提携を積極的に展開する方針だ。
外国語教育を専門とする神田外語大学が開発した教育システムがその一役を担い、大学に限定せず中学・高校や一般にも広く応用されることが期待される。
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