特集

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
  PAGE 18/26 前ページ 次ページ

データベースの利用で客観的に教育成果を評価

 経営評価室の業務は、(1)経営、研究・教育活動などに関する情報を収集・分析し、計画策定や意思決定に必要な情報を提供すること、(2)評価の参考となるデータベースを構築すること、(3)中・長期の目標・計画の達成状況を点検すること、(4)自己点検・評価、第三者評価などの評価活動の企画・立案・実施に携わること、等が中心になる。
 こうした活動は、大学の教育力の改善にもつながっている。例えば、授業評価アンケートや卒業・修了時アンケートを、従来の紙ベースからウェブベースに変更し、アンケート項目は各部局でオプションにより追加できる部分以外は全学で統一。目標とする人材育成が達成できているかどうかを客観的に見られるように設計し直した結果、教育内容の検討や改善が行われるようになった。
 「ウェブでの授業評価アンケートは、現在25〜30%程度の回答率だが、教育改善につながるコメントの多い自由記述欄をデータ化できるメリットがある。その結果、新カリキュラム編成、シラバスの改良、自習時間増加のための授業の工夫など、学部ごとにさまざまな改善事例が報告されるようになった」と中野室長は語る。
 このほか、過去の卒業・修了生に対するアンケートや、卒業生の就職先機関に対するアンケートなど、多層的なアンケート結果をデータベースに組み込み、教育成果を評価する試みを行っている。また、全学的なFD活動の展開や、教員による授業の相互参観(ピアレビュー)の実施など、教育力を高める活動も確実に増加した。
 経営評価室が動き出したことにより、研究・教育活動におけるPDCAサイクルが機能し始めた。これを継続するには、情報を有効に活用することが特に重要で、KUIDの役割はますます大きくなる。浅野助教は「連携しているほかのデータベースシステムとの間でエラーが起きると、そのデータベースの問題点が見えてくる。つまり、KUIDがデータベースのチェック機能も果たしている」と話す。
 2009年度には、各種の情報システムにかかわる全学横断的な機構が新しく創設され、大学情報の統一的な指揮命令系統が稼働を始める予定だ。経営評価室はこの機構と連携しながら、客観的なデータに基づいた大学経営に関する評価活動へと業務を広げ、大学の使命の実現に貢献する。今後は、経営判断に使えるような情報の収集・分析や提案、個々の教員のパフォーマンス評価などにも力を入れていく予定だ。


  PAGE 18/26 前ページ 次ページ
目次へもどる
大学・短大向けトップへ