東京学芸大学は計画的にＳＡのシステムをつくったわけではない。それぞれの部署で必要に応じてＳＡを採用してきた結果、現在の形となった。
　例えば、情報アシスタントのＳＡを採用し始めたきっかけは、2003年度に学生全員にノート型パソコンを必携としたことだった。新入生全員のパソコンを学内ＬＡＮに接続するセットアップ作業などに、教員だけでは人手が足りなかったからだ。さらに、１年次前期にある必修科目の「情報処理」にも補助が必要だった。担当教員が情報処理の専門家とは限らない上に、受講生のパソコンスキルの差は大きい。１クラス約40人全員に教員が目を行き届かせるのは難しいため、情報アシスタント２人に授業を支援してもらうことにした。
　また、学生が自由に使えるパソコン35台が設置されているインフォメーションホールにも、情報アシスタントが常駐する。学生対象のアンケートによると、「分からないことをすぐに聞けて助かる」などと好評だ。駐在の情報アシスタントに、授業内容について質問しに来る１年生もいる。今や授業を支える戦力として欠かせない存在となった。
　大学は、教育的な観点からもＳＡを積極的に採用してきた。教員に必要な姿勢の一つである「支援を必要としている人をサポートする」という考え方を学ぶ場としての位置付けだ。教職特待生をＳＡとして優先的に採用するのは、こうした機会を活用して教員になるための資質を伸ばしてほしいからだ。

　村松副学長は、「優れた教員を社会に送り出すのが本学の使命。たとえ教職に就かなくても、すべての学生が教育マインドを持って卒業してほしい」と話す。
　情報アシスタントの任命式では、村松副学長自らが「報酬は単なるアルバイト料ではない。奨学金と思って受け取ってほしい」と、ＳＡとしての自覚を促す。2007年度には、ノートテーカーとの意見交換会を開き、ＳＡとしての心構えを伝えた。
　活動を通して「ほかの学生に必要とされている」という存在意義を実感できるため、ＳＡとしての意欲は大学側が意図した以上に高まっている。自主的に勉強会を開き、担当分野のスキルや教え方などを互いに磨き合っているケースも見られる。