特集

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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キャリア教育の実質化で求められる視点

 大学は、キャリア教育の実質化を図るべき時期に来ている。まずは、学士課程教育と課外活動を合わせた人材育成の中に、キャリア教育を適切に位置付ける必要がある。
 ゴールを明確にし、そこに到達するための体系的なプログラムを編成し、教職員が協働して組織的に取り組む。これらのプログラム・実施体制が適切かを検証し、見直しにつなげることも重要だ。そのためには、学生からの評価や能力等の測定に加え、卒業生の満足度や活躍度を把握するための追跡調査、企業等に対する調査が有効といえる。入学直後から卒業までトータルに支援することはもちろん、高校や企業等との連携も不可欠だろう。
 山田礼子教授(同志社大学)のグループが全国の2008年度新入生を対象に実施した調査(JFS)では、学生の専門分野によってキャリア教育に対するニーズが異なることがわかった。職業選択で重視する項目を基に学生を4類型に分類。例えば、現実的な視点が強い類型の学生は情報科学や家政学に多く、キャリアカウンセリングに対する満足度が比較的、低い。このことから、実効性の高いキャリア教育を実施するには、専門分野ごとにプログラムの内容を変えるのも手段の一つといえる。
 単なる就職支援ではない、学士課程教育としてのキャリア教育によって、納得のいく進路選択ができ、その満足感が持続すれば、学生と卒業生の満足度は上がるだろう。大学に対する高い満足度はブランド力につながるはずだ。

高校でも組織的なキャリア教育が課題 ――経済産業省の調査より
 ベネッセコーポレーションが、経済産業省からの受託調査として、2008年11月〜2009年2月に「初・中等教育キャリア教育ニーズ調査」を実施した。全国16地区で、高校は379校の学校長を対象に調査した。
 調査で、「組織的、継続的な教育実践、研究には至っていない」と答えた高校は、「とても」と「まあ」を合わせて54.9%に上った。現状では学年ごとの取り組みにとどまり、教員全体の理解に基づく組織的な実践が課題のようだ。「学校外の各種団体(NPO)や人との連携」は「現在、行っている」高校が31.5%で、「今後、取り組みたい」は36.4%。約7割が前向きにとらえている。
 対面調査では、キャリア教育における学校種別の連携と積み上げを課題として挙げる声が多かった。大学に対しては、「キャリア意識形成の連続性を担保するため、生徒が、大学院生や大学卒業後2、3年目の社会人から、進路選択のプロセスを聞く機会を設けてほしい」といった要望が出た。
 高校と大学のキャリア教育には共通する課題が多く、大学を核にした各種団体と高校の連携など、大学からの働きかけによって解決できるものもある。

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