日本の大学教育が抱える構造的な課題の一つに、同時並行して履修する科目数の多さがある。仮に１学期に18単位の履修をする1年生がいたとすると、９科目以上（多い場合は10科目以上）を履修していると考えられる。高校までの科目数を上回るケースが頻発しているのではないだろうか。新しい環境で、高校の単位時間の２倍もある授業を多数、受講することが、“移行”の妨げとなっている側面がある。
　それに拍車を掛けているのが、科目によって履修する学生が違うということである。高校までは、ほぼ同じ顔ぶれの学習集団である。ところが大学に入ると、履修科目によって教室で見る顔はまちまちである。友人を早くから見つけ、学習上の仲間づくりができる学生にとっては、そうした環境でも支障はない。しかし、中退や長期欠席といった危機に陥りやすい学生にとって、人間関係づくりが半年以内に自然に達成できるかどうかには疑問が残る。
　解決策には、前期の初年次教育のクラス編成で履修できる科目を増やすという方法がある。すべての科目を少人数で行えないのなら、ある科目は２〜４クラス合同の編成でもいい。
　ラーニング・コミュニティという手法は、学生が単独で自律的に学習できるという前提に立たない。学生が同じ科目群（複数の科目）を連携して履修し、教室外でも共同学習するしくみをつくろうとする。教員側もそうした学生がいることを意識し、ほかの担当者と情報交換して共通の話題を授業に取り入れることによって、学生の学習を促進する。そうすれば、学習上、相互に助け合うことによって孤立も避けられる。
　こうした手法の導入も、長期ブレークに入るまでに学生の人間関係づくりを促進するのに有効である。実施の際には、教員にいかに負担を感じさせないかが課題になる。学生の集団づくりには、教員間の連絡や連携が重要な鍵である。
　１年次の６月から10月までという夏休みを挟んだ期間は、学生に変化が起きやすい。ただ手をこまねいて見ているのではなく、大学として戦略的な対応策を取ることが重要であろう。