2004年度には、それまでの実践を振り返り、ゼミⅠの基本コンセプトを「大学へのスムーズな接続」「スタディ・スキルの獲得」「キャリア意識の醸成」「課題探求型学習」と明確にした。当時、教務委員長だった笹金光徳教授によると、それまでは個々の課題に対応する形で改善を進めてきたため、いったん立ち止まり、全体像を見直したという。以後、高千穂大学の初年次教育は、このコンセプトを基に改善が重ねられた。
　「大学へのスムーズな接続」の柱となるのは、アドバイザー制度とフレッシャーズ・オリエンテーションだ。オリエンテーションの期間中は、ゼミⅠのクラス別研修や綱引き大会など、終始クラス単位とし、多くの新入生が抱く「友達ができるだろうか」という不安をぬぐい去る。さらに、早い段階で大学生活に慣れるように、時間管理やキャンパス内のマナーについても指導する。
　そして、2005年度には「高千穂マスタープラン」を導入。４年間を通して目標管理のできる人間の育成を目的としている。ゼミⅠの初回の授業で、独自のポートフォリオ型ツールである「行事編」「内容編」の２枚のシートにより、大学4年間を具体的にイメージさせるようにした。
　行事編には、定期試験やガイダンスなどの４年間の日程がまとめられ、留学、教員免許取得や就職活動の準備を始めるべき時期などが一目でわかる。一方、内容編には、学年ごとにつけたい力や考えておくべきことが記されている。学生は、時期ごとにモデルを基にして目標を設定し、それを実現するための計画から検証までのＰＤＣＡサイクルを自ら管理するようになった。
　学生に高千穂マスタープランを主体的に活用させるため、「学生生活目標管理シート」も導入した。学生が前・後期ごとに、自らの目標に対する反省や改善点を書くシートだ。

ゼミⅠクラス別対抗綱引き大会。同期生との関係がより親密になる。

　「スタディ・スキルの獲得」については、主にゼミⅠの前期の授業で集中的に指導する。授業の受け方、ノートの取り方、レポートの書き方やプレゼンテーションの方法をはじめとする「読む・聴く・書く・話す」に特化した内容だ。
　「キャリア意識の醸成」は、高千穂マスタープランや学生生活目標管理シートの活用のほか、就職試験の一般常識問題に沿った小テスト「ガンバレ高千穂」などにより行う。ガンバレ高千穂には高校での学習内容も含まれ、リメディアル教育としての側面も持つ。ゼミⅠの授業の冒頭10分で問題を解き、授業後に学生が自己採点する。学生の自主性を重んじ、学びへの自覚を促す。年度の最初と最後に同じ問題を解かせると、平均点はわずかながら向上するという。何もしなければ学生の基礎学力は低下する傾向にあるのだから、この結果は意義深い。
　「課題探求型学習」は、ゼミⅠの後期の授業におけるグループワークが中心だ。特定のテーマに沿って調査し、8クラスが集まる共同授業でプレゼンテーションをする。このプロセスを通じて、問題発見能力、課題解決能力、論理的思考力やコミュニケーション能力を育成するのがねらいだ。当初、希望者のみが発表していたが、2006年度から全員必須に変更。その結果、教員とのコミュニケーションが密になり、学生の意欲も以前に増して高まった。