千歳科学技術大学は、卒業生によるキャリア教育支援、就職支援と、大学による卒業生へのネットコミュニティー提供を組み合わせたユニークなシステムを開発。2009年5月にスタートしたSNS「就職部コミュニティ」では、学生が全国の卒業生から就職にかかわる情報を収集できる。地方大学ならではの「いながら企業訪問」というコンセプトだ。ほかに、卒業生同士が交流したり、研究室OBとして教員や後輩と交流したりするコミュニティーもある。魅力的なコミュニティーができれば、卒業生が自然に母校に“集い”、大学・学生と卒業生との双方向のコミュニケーションが活発化するはずだ。
卒業生に再就職・転職支援サービスを提供する大学が増えている。人材サービス会社と提携するケースもあるが、札幌国際大学ではそこに同窓会も加わり、3者が連携する。大学のキャリア支援センターが卒業生から転職などの相談を受け付け、人材サービス会社と提携してカウンセリングや面接トレーニングを実施。費用は同窓会が負担する。2008年から始めた。
東洋大学では2003年度から、学祖・井上円了の建学の精神について学ぶ校友会寄附講座が開講されている。大学のアイデンティティーを確認し、卒業生と学生の一体感を高める取り組みといえそうだ。文学部が開講し、学部、学年にかかわらずだれでも受講できる。
芝浦工業大学では、卒業生のニーズに応えた新サービス「同窓会応援パック」が好評だ。幹事から依頼を受けて大学側がキャンパス内での同窓会をセッティングし、案内状送付や出欠確認、会費徴収、食事の手配などをする。大学職員によるキャンパス案内、大学グッズの進呈が組み込まれている。担当者は、「2006年に豊洲キャンパスができてから、卒業生からの見学希望が相次いだ。同窓会と見学をセットにすれば喜ばれると考えた」と説明。旧交を温めながら母校の発展ぶりを直接確かめる機会の提供が、卒業生の組織化、母校支援につながることも予想される。
これらの事例には、大学の特色、方向性を打ち出しつつ、卒業生のニーズに応えながら協力関係を築こうという姿勢がうかがえる。
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