意外性のあるビジュアルで
「進化する大学」を表現

　芝浦工業大学にとって、2009年度は、芝浦キャンパスの開校、デザイン工学部およびシステム理工学部数理科学科の開設と、大きな改革の年となった。入試・広報部は、新キャンパス・新学部・新学科を告知する統一したイメージの一括キャンペーンを、2008年度の１年間、行うことにした。
　そのキービジュアルとして採用したのが、魚のアジの写真だ。「ひとあじ、違うぜ。」というキャッチコピーと組み合わせ、情報量を極力抑えたデザインにまとめた。
　シンプルながら、インパクトは十分にあった。アジのビジュアルを表紙にしたパンフレットは、高校訪問時に必ずといってよいほど高校教員との話題の糸口となり、合同進学説明会では、来場者の注目をひときわ集めたという。
　新聞や雑誌などさまざまなメディアで大規模に広告を展開し、話題となった。中でも注目を集めたのは、2008年８月の２週間、ＪＲ山手線の車体にアジをプリントした車体広告（ＡＤトレイン）、通称「アジトレイン」だ。多くの大学がオープンキャンパスを実施する時期で、普段は電車を利用しない高校生も乗る機会があると予想。地方から東京を訪れる観光客も増えるため、一般の人にも芝浦工業大学の名前を知ってもらう機会となり、より大きな宣伝効果が期待できると考えた。
　ＡＤトレインに対する学内外からの反響は大きかった。理事や教員からは、「何時にアジトレインが走るのかダイヤを教えてほしい」「見ましたよ」など、好意的な意見が多かったという。併設高校の鉄道研究会からは、「アジトレインの模型を作りたい」という声も寄せられた。入試・広報部の田丸敦之入試課長は、実際にアジトレインに乗り、乗客の反応をチェックした。
　いくつかの大学や官庁などからは、費用や手続きに関する問い合わせがあり、メディアからの取材も相次いだ。興味を持って話を聞きに来た他大学の広報担当者は、「本学では実現不可能だろう」ともらしたという。そして、（株）ジェイアール東日本企画が主催する「交通広告グランプリ2009」の車体広告部門において、審査作品78点の中から優秀作品賞に選ばれた。反響が反響を呼び、二次的、三次的な宣伝効果を生んだ。
　2008年度のオープンキャンパスへの来場者数、および2009年度入試の志願者数は、前年度を大きく上回った。