芝浦工業大学は、手法にこだわりながら広報活動を行ってきた。それゆえに、一見大胆に見える表現には確固たる「核」がある。
　田丸課長は、「多くの大学は、広報の内容に力を注いでいても、それを伝えるための技術、つまり広報手法に対する関心はまだ低いのではないか。本学の広告は一見大学らしくないと思われるようだが、見てもらうことを第一に考えているだけで、決して奇をてらっているわけではない」と話す。
　「入試広報の基本的な内容をいちいち詳細にアピールするのではなく、意表を突くビジュアルによって受け手の興味・関心を喚起し、『手に取ってみたい』と思わせる工夫をしている」と、田丸課長。広報物を手に取ってもらうための工夫として、掲載する情報量を極力抑えるようにしている。
　「広報する側は、あれもこれも伝えたいと情報を詰め込んでしまいがちだが、受け手は、小さい文字が並ぶ広告にそれほど興味を持ってくれない。どれほど詳しく書いても、読んでもらわなければ意味がない」と、田丸課長は強調する。
　いわゆる理工系離れに対する危機感は、ユニークな広告表現に積極的に取り組む原動力になっている。
　2010年度の入試広報のキービジュアルは、「トラ」だ。トラの着ぐるみをかぶった学生がキャンパスにたたずんでいる写真に、「ものづくりのトラになる。」というコピーを添え、ものづくりにおけるチャレンジ精神をアピールしている。ユーモラスなビジュアルによって、「暗そうという、理工系大学に対して漠然と抱くマイナスイメージをぬぐい去りたい」と田丸課長。工学、そしてものづくり本来の魅力を知ってもらうために戦略的に、異彩を放つキービジュアルを採用している。