特集

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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制約の打破と自己改革が大学の唯一の道

 これからの時代に確かなことの一つは、自分の大学に在籍する学生が、将来広い世界で自分を生かしながら食べていくのに役立つ知識、スキル、経験を身に付けさせることが、学生の幸福のためでもあり、多くの大学にとって必須だ、ということである。
  中教審大学分科会で了承され、去る2月1日付で大臣に答申されたキャリア教育についての大学設置基準改正も、この考え方に合致することだと思われる。キャリア教育などすでにやっている、といわれる大学関係者も多いかもしれないが、今の学生が社会の第一線に立つ20年後を的確に予測したキャリア教育を実践している大学は、筆者の見るところ、それほどあるとは思えない。
  突き放すようではあるが、大学は知恵を絞って、これからの時代に果たす自らの機能を決めていかなければならない。それが大学自治の本質であり、真の大学力をもたらす。知恵を絞って的確な機能を確立した大学は伸び、知恵を絞る努力を怠っている大学は足踏みをし、何らかの事情があるにせよ、自分に最もふさわしい機能に背を向けた大学は、退場せざるを得ない。
  例えば、国際的水準の教育・研究を自任する大学は、世界の主要大学に増して知恵を絞って向上を図らなければ、グローバルな大学間競争の場から早晩、消え去ることになるだろう。「築城3年落城3日」という言葉があるが、大学も同じことだ。
  受験生が来てくれない、地元に就職先がない、立地が悪い、補助金が少ない、お金がない、学内のコンセンサスが取れない、法律や省令、条例の縛りが多過ぎる、政府が悪い、自治体が悪い。いろいろな言い方がされるし、それらが制約になる場合が多々あることも事実である。
  しかし、そう言っていて何になるのだろう。大学が退場せず、足踏みせず、伸びていかなければならないのは、ひとえに学生たちのため、そして将来彼らが支えていくべき日本と世界の未来のためにほかならない。いろいろな制約を打破して学生たちの未来を拓くためにも、知恵を絞って自己改革を進めることが、国公私立を問わず、大学の唯一の道ではないだろうか。


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