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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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情報公開

3つのポリシーの設定と質保証の成果の開示

 自己点検・評価やIRを通じて収集した情報を、大学はどの程度公開しているのか。現在、ウェブサイト上でどのような情報を公開しているか、また、公開予定があるのかを聞いた結果が図表6である。

図表6:大学の情報公開

 「各学部の定員数情報」「教員組織や施設・設備等の情報」などの基本情報は、9割近い大学が公開している。一方、公開が進んでいない情報の一つが、「退学者数・休学者数に関する情報」である。「今後新たに公開する予定もない」が半数近くに上る。大学関係者には、「退学者数や休学者数は、その理由と併せて評価・判断してもらう必要がある。表面的な数値だけで判断されては困る」という考えから、公開に対する強い懸念がある。こうした点も視野に入れ、今後の情報開示に向けたルールづくりと関係者の合意形成が必要である。
  一方、いまだ積極的に公開されていないもう一つの情報が「学生の学習成果に関する情報」である。学士課程答申の趣旨に照らしていえば、今後、各大学の教育内容・成果は、学生・保護者や企業に対して、積極的に公開されるべき最も重要な情報といえる。
  3つのポリシーのうち、アドミッション・ポリシーは約7割の大学で情報公開されているが、カリキュラム・ポリシーは約4割、ディプロマ・ポリシーは約3割の情報公開にとどまる。この2つのポリシーは、「今後新たに公開を予定、または検討する情報」で上位にある。なお、ディプロマ・ポリシーの学部段階の設定状況は3割である。文部科学省の「大学における教育内容・方法の改善実施状況について」によると、学部段階においてアドミッション・ポリシーを設定している大学は約72%で、そのうち、求める学生像だけでなく、高校段階で習得しておくべき内容・水準を規定している大学は約8%と少ない(いずれも2007年度)。
  3つのポリシーの設定とその情報公開を進めること、「質保証の成果」を公表することが、今後、取り組むべき優先事項である。

「質保証を中心とした大学教育改革の現状と課題に関する調査」概要

調査主体:ベネッセ教育研究開発センター/調査対象:全国4年制大学全学部(2043学部)/有効回答数:851学部(回収率41.7%)、467大学(のべ回収率61%)/調査時期:2009年9月/調査方法:質問紙を郵送 /調査協力:沖清豪教授(早稲田大学)、岡田聡志氏(早稲田大学大学院生)
※質問項目ごとに無回答の件数は異なるが、それぞれの項目で無回答を除いて集計している。


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