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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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卒業生の生の声に生徒が抱く現実感

 生徒が志望校を選ぶときに、最初に着目するのは、自校の卒業生の合格実績が高い大学だ。口コミで評判は聞いているし、先輩が合格しているから自分も合格できるのではないかと思う。教員も、「卒業生Aがこの成績で合格したから、在校生Bもあとこれくらいがんばれば合格できる」と予測でき、指導がしやすい。
 卒業生の声は、生徒に大きな影響を与える。近年、難関国立大学もオープンキャンパスを開催しているが、高校は希望者を募り、バスをチャーターして参加する。そのとき、あらかじめその大学に通う卒業生に依頼し、キャンパスを案内させたり懇親会を設けたりすると、生徒が、卒業生との交流によって、その大学への志望意欲を高め、学習に力を入れ始めるという、大きな効果があるからだ。
 情報はインターネットですぐに入手できるが、生の声はそう簡単には手に入らない。そのため、インターネットで得た情報と同じ内容でも、生の声のほうを現実味を持って受け取る。本校が行う中学生対象の高校入試説明会では、生徒に高校生活について語らせ、吹奏楽部や合唱部などのデモンストレーションを行う。中学生へのアンケートでは、この在校生のパフォーマンスが評価されている。このことからも、体験者の生の声が重要だと実感している。
 一定の進学実績がある大学の情報を集めておけば、現状の進路指導は事足りている。生徒には、先輩からその大学の入試や大学生活についての体験談を直接聞けるという安心感もある。私たちは、ある程度評価している大学でなければ、資料が大量に送られてきても、生徒にはあまり紹介しない。インターネット上に情報はあふれているが、上手な検索の仕方を知っている生徒や保護者は少ない。何の予備知識もなく、自分に合った大学を探し当てることは難しいからだ。
 教員の助言によって、それまで知らなかった大学を志望するケースもある。「自分の希望や学力をよく知っている先生が薦めてくれるのだから」と、生徒の心は動きやすい。


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