特集
福島真司

ふくしま・しんじ

広島大学大学院学校教育研究科、桜美林大学大学院国際学研究科、ビジネス・ブレークスルー大学大学院経営学研究科を修了。修士(教育学、大学アドミニストレーション)、MBA。山陽女子短大、宮崎国際大学、鳥取大学を経て2007年から現職。


Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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[オピニオン2]

AO入試制度の評価の前提となる
追跡調査の視点


山形大学エンロールメント・マネジメント室教授  福島真司

AO入試改廃には科学的な根拠が必要

 ある入試を評価するには、どのような方法があるだろうか。入試制度の妥当性やテスト自体の妥当性等、入試研究者はさまざまな観点、方法で評価を試みてきた。AO入試制度の妥当性についても、アドミッション・ポリシー(AP)の表現や公表の方法、APと選抜方法の関連性や合否判定基準の妥当性、入試制度と入学後教育の関連、入学者の追跡調査等、必要な検証は多岐にわたって存在する。入学者のGPA追跡調査は、数ある検証方法の一つにすぎない。
 国立大学のAO入試の募集人員は、一部で縮小の動きも見られるが、おおむね増加傾向にある。縮小の理由としてよく、「AO入試導入によるコスト増大に見合う学生が獲得できなかった」という話を聞く。期待と成果の不一致という理由は、理屈が通った判断に見える。しかし、科学的な検証がなされていなければ、この議論は成立しない。このような理由で募集人員を縮小した大学は、導入時に、コストと成果をどのように指標化したのであろうか。また、AO入試実施後のコストの測定や期待した成果と実際の成果との分析をどのように実施し、さらには、どのようなリーダーシップの下で改善を行ってきたのであろうか。
 大学入試制度の変更によりコスト負担を求められるのは大学側だけではないため、科学的な検証なしに制度の改廃を決定しているとすれば大きな問題であるし、「期待に見合う学生ではなかった」と評されたAO入学者は浮かばれない。


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