特集

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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世界の潮流を見通した入試の思想と方法が必要

 大学は専門知識の基礎をしっかりと学ぶ場である。現在、大学教育の質の保証が議論されている理由の一つは、日本の大学がおおむねこのことをおろそかにし、勉強しない学生を大量に卒業させてきたからだと言ってよい。
 しかし、1989年のベルリンの壁崩壊から20年、世界の高等教育の潮流は専門知識の基礎修得のさらに先を行き、「21世紀に生きる力」をどう身に付けさせるか、という広い視野を持ちつつある。
 OECD(経済協力開発機構)におけるPISA(国際学習到達度調査)のプログラムにも関係した、いくつかの国の専門家が連携して始めた21世紀スキルの評価・教育プロジェクト「ATC21S(Assessment and Teaching of 21st Century Skills)」は、その具体的な動きの一つである。
 さらには、デジタル技術、ネットワーク技術をはじめとする先端的な情報通信技術に支えられた学習者中心の教育システムの構築も、「21世紀に生きる力」を国民がどのようにして身に付けられるかという観点から、先進諸国の共通の課題になりつつある。
 日本の大学にとって、推薦・AO入試の成功例と現実の課題をふまえたうえで、こうした世界の潮流を見通した大学入学者選抜の新しい思想と方法を考えるべき時期が来ているのではないだろうか。

推薦・AO入学者の推移

 私立大学における推薦・AO入試による入学者は、2008年度に全体の50%を超えた。その内実は玉石混交と言ってよいのではないか。こうした国内の状況を尻目に、世界の潮流は「21世紀に生きる力」を重視する教育に向かっている。こうした力を学生が身に付けられるようにするにはどんな入学者選抜方法があり得るか。その中で、これまでの推薦・AO入試は今後も使えるのだろうか。
 推薦・AO入試を経営難回避を目的とした受験生の青田買いのために使う大学は、厳しい大学間競争の中で早晩撤退を余儀なくされるだろう。そのような大学は別として、経営改革と教育改革の両方に意欲のある大学にとっては、推薦・AO入試のあり方を含め、「21世紀に生きる力」を身に付けさせるための教育戦略の一環として、入学者選抜のしくみを考える時期が来ているように思う。


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