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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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入学前教育で高まる満足度と大学への期待

 松本大学が入学前教育を導入したのは2005年度入学者からだ。同じ学校法人が運営する松商短大(1953年開学)が2003年頃から導入し一定の成果を収めていたことが契機になった。
  短大では、それ以前、就職活動の開始直前に全学生を対象にキャリア・カウンセリングを実施していた。それまで、就職に対する学生の意欲の低下が大きな問題になっていたが、カウンセリングによって多くの学生が就職活動に積極的になった。短大での入学前教育にかかわった住吉副学長は、「1回のカウンセリングでこんなに変わるなら、入学前から実施することによって、入学後の学習意欲や態度を変えられるのではないかと考えた」と話す。
  短大における入学前教育の導入当初のねらいは、入学者の悩みや置かれている状況を教職員が把握し、支援に役立てることだった。しかし、取り組みを続ける過程で、学生の成長には、自ら進んで学びに向かう意欲を育てることが不可欠であるとわかってきたという。これが現在の大学での入学前教育につながっている。
  一方で入学前教育には、目的意識が弱い一部の入学者へのケアという側面もある。他大学との比較検討や、大学での目標について考えることをしないまま入学する者もいるからだ。「入学前教育には、学生生活を充実したものにしてもらいたい、という願いが込められている。入学後の学びと就職を見据え、自己肯定に基づいた人生設計を行う第一歩と位置付けている」と柴田幸一学生センター長は話す。

2010年度入学者の入学前教育(集合セミナー)に対する
満足度調査の結果(抜粋)

 住吉副学長は、「入学前教育は一定の成功を収めている」と語る。導入初年度の1年生の学習態度は、それ以前の学生と比べると非常に熱心で、多くの教員が驚くほどだったという。導入後、継続的に実施しているアンケートでも、入学者の満足度が高く、学びへのモチベーションが喚起されていることがわかる。
 地域社会に教育の特色を積極的に発信し、第一志望の入学生を増やしてAO入試で意欲を確認、入学前教育でさらにモチベーションを喚起するという一連のプロセスは、AO入試のあり方を検討するうえで参考になりそうだ。


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